その中でもっとも強固で持続的な幸せが、ユーダイモニアである。ユーダイモニアは病気、貧困、離婚、失職など、外的環境や自分にふりかかった不幸にさえ影響されないという。自分が生まれてきた意味、生きる目的、天命、天職を知っており、強制や我慢や努力ではなく、自分が心からそうしたいと思い、ワクワクしながらそのことに取り組む。それが自分ひとりの幸福ではなく、結果として他者や世界全体の幸福につながり、貢献することを自覚し、自分ひとりの幸福のために生きるよりも、圧倒的な強度の幸せを感じながら、それに邁進する状態である。

 キング牧師、マザー・テレサ、ガンジー、チャーチルなど、偉大な政治家や社会活動家、宗教者、教育者や、経営者ならスティーブ・ジョブズなどの活動を思い浮かべるとわかりやすいかもしれない。

 フローが高く、ユーダイモニア状態にある人を水野氏は「ユーモアウト」していると表現する。水野氏の調査データでは、ユーモアウトしている人は総じて「感動力」「人間力」「自己実現力」が高い。

「従来型のマーケットインの手法で、毎年3万点の新商品が生み出されていますが、95%が失敗してすぐに消えてしまいます。それは自分ひとり、あるいはせいぜいチームの寄せ集めの知識や知恵レベルの考えには人間の脳を理解することに限界があるからです。iPhoneのようなヒット商品は、つくった人もワクワクして作ったはずです。ワクワクの源泉は人間の魂の奥底に通底する集合的無意識、潜在的な欲求や幸せに直結したもの。そこから生まれたものだけが、ロングセラーや爆発的ヒット商品として残っていくのです」(水野氏)

 ユーモアウトしていれば、強制や我慢とは無縁なので生産性が高く、魂から湧き出るワクワクを源泉としたモノ・サービス作りを自然の流れに任せて行える。したがって、付加価値の高いものを生み出せるということだ。つまり、ユーモアウトして仕事ができれば最強であるし、社員をユーモアウトさせる企業は最強だといえる。ごく単純に言えば、ユーモアウトしているかどうかを簡単に見分けるには、「その仕事をするのに、ワクワクして自然に朝早く目が覚めるかどうか」だと言う。