人の志向性や行動原理は
意識構造でタイプが分かれる

 水野氏の調査で、ユーダイモニアの強度は「意識構造」とも深く関連していることがわかった。意識構造は、水野氏が提唱している精神的な志向性を10種類の状態として示したもので、ハーバード大学教育大学院のロバート・キーガン教授らが研究を進めている心理学の「成人発達理論」の流れを汲む。

 水野氏は、意識構造と、ポジティブ心理学を融合した、幸福発達モデルを独自に構築し、企業の人材開発における、能力開発、適職、教育、発達支援に役立てている。以下に意識構造の型とその行動原理を示す。

(1)本能志向型:純粋な好奇心、将来よりも今に生きる
(2)他者誘導型:勝利にこだわる、規則に囚われない
(3)組織貢献型:チームや上司に従い、慣習を順守する
(4)組織調整型:組織の安定や調和を順守する
(5)理論運用型:主体的に自律し、自分の世界観で他者をリードする
(6)正義・調和型 :世のため人のために生きる
(7)新世界発見型:従来的な常識を超え、新たな常識を模索する
(8)他者支援型:他者の支援による相互成長を楽しむ
(9)自己解放型:新たな社会システムを創造する
(10)時空超越型:実存を超えて、全体に溶け込む

 水野氏は「日本の企業のスタッフ職は、(3)の人が多く、管理職、役員クラスでは(4)が多い。(5)はMBAホルダーなどに多い傾向があります。それより先は多くの人がたどり着く前に寿命がつきます(笑)」という。社会貢献意識の強い起業家などは(6)に当たり、(10)は仏教の悟りや涅槃の境地のようなものといえるだろう。

 あくまでもタイプで、優劣ではないが、(1)から(10)の順に進化していくのが一般的だ。そして、ユーダイモニアの強度は自己解放型に近いほど強くなる。また、それぞれの意識構造では、体得しやすい固有の強みがある。

 また、それぞれの強みはだいたい何年の取り組みで会得できるかというおおよその目安もある。さらに最近は利己や利他もテーマになるが、(1)(2)が利己、(3)(4)は非利己(人に迷惑をかけない)、(5)は利己、(6)(7)が利他、(8)(9)が(他者と自己の利益)相利、(10)は利自(自然の利益)を尊ぶ。