VUCAとも呼ばれる変化が激しく、曖昧で適応が難しい時代。企業を成長させ続けていくには、どのように組織開発をし、社員をマネジメントしていけばいいのか。また、環境・社会・企業統治を意識したESG投資に注目が集まる中で、企業の非財務情報をどのように企業価値に活かすべきか。従業員の幸福が企業の持続性・生産性の向上につながると語り、それを可視化する手法を開発し、コンサルティングを行う、一般社団法人ユーダイモニア研究所の代表理事である水野貴之氏に話を聞く。(ライター 奥田由意)

社員の幸福度と生産性に
「相関関係あり」の調査結果

 コロナ禍でテレワークが普及し、また働き方改革などで社員が会社にいる時間が減っていることもあり、社員のモチベーションをどう高めるか、どのように社員のエンゲージメントを高めるかがますます重要な課題になっている。

 実は社員が生きがいを感じており、幸福度が高ければ、社員の生産性が高まるという調査結果がある。数々の大手企業で、企業価値や人材育成にかかわる調査研究やコンサルティグを手がける水野貴之氏は、50問の質問に答えることで、被験者の幸福度や意識構造、生きがい(生きがい=ikigaiというキーワードでそのあり方を測っている)を定量的に測る手法「eumoグラム」を開発した。その被験者1543名の調査結果から、幸福度と生産性の相関関係が導き出せたという。

 また、カリフォルニア大学教授のソーニャ・リュボミルスキー、ミズーリ大学のローラ・キング教授、およびイリノイ大学のエド・ディーナー特別教授が行った、225件の学術研究についての詳細なメタ分析によると、幸福感の高い社員の生産性は平均31%、売り上げは37%、創造性は3倍高いという結果も導き出されている(「DIAMOND ハーバード・ビジネスレビュー2012年5月号」より)。

幸福には3つの種類があり
ユーダイモニアが最強

 水野氏によれば、幸福には種類があり、「ヘドニア」「フロー」「ユーダイモニア」の3属性に分類できるのだという。

「ヘドニアはおいしいものを食べて満足といった、外的な刺激によって得られる快楽、肉体的な幸せ。フローはなにかに没頭している忘我状態の幸せ。ユーダイモニアは自分が生まれた目的を知りそれを実践する持続的な幸せを指します」(水野氏)