女性をシンボルに、その下で「昭和の保守派」がうごめく?

 橋本氏以外にも、さまざまな候補者の名前がメディアで取り沙汰された。その中には、菅義偉首相や、小池百合子東京都知事などの意中の候補というような、真偽のわからない情報も飛び交った。

 突き詰めれば、どの情報も「権力者が意のままに動かせる候補者」は誰かというものだった。この難局を克服して五輪・パラリンピックを開催させる器量がある人物は誰かという話は出てこなかった。スポーツ界に限らず、ビジネス界、学界まで範囲を広げて人材を求めてもよかったが、それもなかった。

 結局、森前会長と「親子のような信頼関係」がある「スポーツの族議員」の橋本氏が「昭和の保守派」の男性陣(本連載第268回)にとって最適の人材だったということだと思う。

 東京五輪・パラリンピックを仕切るのは、橋本新会長、小池東京都知事、橋本氏の後任の丸川珠代・新五輪担当相の女性3人だ。今後、日本社会ではさまざまな場面で女性を積極的に起用しようとすることになるだろう。

 だが、「イメージがよくて、言うことを聞く女性」を組織のシンボルとしてリーダーに担ぎ、その下で「昭和の保守派」が旧態依然たるやり方を死守するのであれば、むしろ世界の進歩からこれまで以上に取り残されることになるだけだ。

 結局、企業の管理職における女性の割合が、わずか14.9%だということなど(参照:男女共同参画局)、日本の女性の社会進出は世界の中で極めて低いという現実を直視するしかない。

 世界には、ノーベル平和賞候補にも挙がるニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(40歳)やフィンランドのサンナ・マリン首相(35歳)などの女性指導者がいる。だが、彼女たちの登場の背景に、社会全体で女性の活躍を進めてきた基盤があることを忘れてはならないということだ。