みずほフィナンシャルグループが、傘下の銀行と証券会社の2トップを交代する。みずほ銀行の新頭取は、自行の「商売下手」を認めて営業力の強化を掲げた。同時に、グループ社長の後継者レースも混然としてきた。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)
営業畑23年と異例のキャリア
対人能力に強み、中枢人脈の乏しさが弱み
2月19日、みずほフィナンシャルグループ(FG)が傘下のみずほ銀行とみずほ証券の首脳人事を発表した。どちらも4月1日付けであり、銀行では4年ぶり、証券会社では3年ぶりのトップ交代となる。
みずほ銀では、藤原弘治頭取が会長に退き、加藤勝彦常務執行役員が後釜に座る。「性格はさっぱりとしていて気さくであり、対人能力が高い。ただ、企画など経営中枢の社内人脈や戦略構想力は乏しいのではないか」。加藤氏を知る社内外の関係者の声をまとめると、こんな長所と短所が浮かび上がる。
周囲の評価を裏付けるように、加藤氏は“頭取らしからぬ”キャリアを持つ。旧富士銀行に入行してから33年間の銀行員人生のうち、加藤氏は海外営業が15年、国内営業が8年と計23年を営業部門に籍を置いてきた。特に長いのがアジア駐在であり、赴任先はシンガポール、香港、ベトナム、韓国の4カ国にわたる。
頭取といえば、現職の藤原氏のように、銀行中枢で戦略構想を描く企画畑でキャリアの大半を過ごした人物が多かった。加藤氏も企画経験は9年あるが、それ以上に営業畑に偏っており、「歴代みずほ銀行頭取の中で、おそらく最も長い現場経験がある」(加藤氏)と自認するところだ。
坂井辰史FG社長は、「国内外で培われた豊富な現場経験を通じ、高い顧客対応力を有することが強み」として、加藤氏が営業現場を統率する役割を強調する。
営業畑を歩んできた加藤氏だけに、記者会見の壇上では、「収益力の今のレベルは必ずしも十分ではない」と課題を指摘。さらに、自行の“弱点”については、「顧客から『みずほの提案内容や商品は素晴らしいし、行員は優秀だけど、最終的にビジネスは他行に取られてしまう』、『みずほは商売が下手』と言われる」と語った。このため営業力の強化に、これから全力を挙げる構えだ。