銀行員完全転職マニュアル#10Photo:Diamond

コロナ禍によって職務重視の働き方が叫ばれるようになったが、一足早くビフォーコロナから成果主義にかじを切っていたのが3メガバンクだ。特集『銀行員完全転職マニュアル』(全17回)の#10では、機能不全に陥った「年功序列」というレガシーの打破を目指して各社が進める人事改革の進捗度を探った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

役職や肩書ではなく成果と職務重視に傾倒
メガバンクが「年功序列」の打破に動いた理由

 もしかしたら出向になるかもしれない――。ドラマ「半沢直樹」シリーズで、主人公の半沢が妻の花にそう打ち明けるシーンがある。出向で閑職に追いやられれば出世の芽はない。半沢は、自らの出世や自己保身に走る上司と役員に立ち向かい、銀行員としての生殺与奪の権を彼らに握られながらも、その悪事を暴いて「倍返し」することで銀行内での評価を上げている。

 ドラマから現実の世界に話を戻そう。半沢が起こした逆転劇はあくまでフィクションだが、現実のメガバンクにおいては、役職や肩書にとらわれずに成果や職務を重視することで、年功序列を打破する人事評価制度の導入が進んでいる。

 銀行は頭取を頂点として、入行年次に基づき、数万人にも及ぶ巨大なピラミッド形の組織を築き上げてきた。それを支える年功序列という組織秩序にメスを入れた理由として、大きく二つの要素がある。

 一つは競争環境の変化だ。異業種が、金融業界に参入していることに加え、銀行には融資という本業依存から脱却してビジネスの多様化が求められている。もう一つは、新卒一括採用による終身雇用へのこだわりが若手人材の間では希薄になり、同時に多様な働き方を求める声が上がっていることだ。銀行業界を襲った変化の荒波を乗り切るには、競争力のある優秀な人材に長く定着してもらうことが必要だが、それには “古きよき”慣習を維持したままでは不可能だという考えに至った。

 そこに、新型コロナウイルスが襲来した。感染症対策として、各社は半ば強制的にリモートワークへの移行を求められた。日常的なコミュニケーションの頻度が限られる中で、役職ではなく成果や職務にひも付けて個人を評価する体系の構築が課題となっている。

 コロナ禍が到来する前、メガバンク3行のうち最も早く「職務」の重要度を増すための抜本的な人事制度改革に打って出たのが、三菱UFJ銀行だ。2019年4月に複数の改革に着手。勤務地などが限定されていた特定総合職を総合職に統合し、入行年次などに基づいて職員に割り振られる階層も5層から3層にスリム化した。最大の注目点は職員ごとに課される職務の中身を見直して、職務を達成したかどうかの評価を給与や昇給により反映させる制度に変更したことだ。