東京電力福島第一原発の事故から10年。原発事故収束担当大臣として指揮した細野豪志氏が、改めて当時の関係者たちを取材し、3.11からの10年を検証した『東電福島原発事故 自己調査報告』を上梓した。政策形成の中枢に関わった人たちの注目すべき発言や、これからの課題などについて、細野氏が緊急寄稿した。
福島県浜通りの
忘れがたい三つの場所
福島県浜通りには、私にとって忘れがたい場所が三つある。
第一に、東京電力福島第一原発(以下、「いちえふ」と称す)への前線基地となったJヴィレッジだ。装甲車や消防車で埋め尽くされ、自衛隊によって管理されていたあの場所が、10年後にサッカー場として若者の集う場所としてよみがえる姿を当時は想像できなかった。
第二に、原発のある大熊町だ。閣僚として「いちえふ」を訪れる度に、人の住まない大熊町の荒涼たる姿に胸が痛んだ。事故後すぐに「大川原地区を再生の拠点としたい」と言い切った渡辺利綱大熊町長の静かだがドスンと腹に響く言葉に、私を含めた政府関係者の中で自信をもってうなずけた者が何人いただろうか。今や大川原地区は、原発事故収束の拠点として再生している。