「偏向報道」とまで揶揄された
モリカケ問題とは明らかに異なる雰囲気

 安倍前首相が逮捕されていないことからもわかるように、これら2つの疑惑には首相の直接的な関与を示す確たる証拠がない。つまり、立件されず、当事者も否定をしたらお手上げなのだ。しかし、マスコミは決して追及の手を緩めなかった。

「朝日新聞」の社説(2017年9月17日)によれば、首相との距離によって、行政が歪められているかもしれないという疑惑は、「民主主義と法治国家の根幹にかかわる、極めて重いテーマ」(朝日新聞2017年9月17日)だからだ。

 事実、視聴者や読者の関心が薄れても、テレビや新聞は朝から晩までモリカケ、モリカケと騒ぎ続けた。首相が釈明をすれば「信用できない」「矛盾する」と粗を探した。ワイドショーでは特大パネルで人物相関図を解説し、司会者やコメンテーターが「ますます謎は深まりました」と2時間ドラマのようなセリフを吐いていたのは、皆さんもよく覚えているはずだ。

 そのあまりに常軌を逸した疑惑追及キャンペーンに、一部からは「偏向報道」「戦後最大の報道犯罪」などという批判も起きたが、マスコミは「行政が歪められた」と1年半も騒ぎ続けた。それが彼らの考える「社会正義」だったからだ。

 しかし、どういうわけか今回の「菅首相の長男による総務省幹部高額接待」は、わずか1ヵ月ぽっちで大人しくなっている。二重人格のような豹変ぶりなのだ。

 今回も菅首相の直接的な関与を示す物証はない。しかし「状況」だけを見れば、モリカケ問題よりもはるかに行政が歪められている感が強いのは明らかだ。

 まず、総務大臣だったパパの力で総務大臣秘書官に召し上げられた息子が、総務省が許認可する放送事業を手がける企業の部長におさまって、パパに左遷されないかと怯える総務省幹部たちに高額接待をしている、という構図が大問題であることは言うまでもない。モリカケのときにも散々指摘された、人事権を握られた官僚が勝手に首相の希望を慮り、先回りして、特定の事業者を優遇する、という「忖度」が引き起こされるからだ。