菅政権は携帯電話の料金引き下げを至上命令としている。その圧力によって、大手キャリアはオンライン専用の料金プランを新設するとともに「格安SIM」と呼ばれる仮想移動体通信事業者(MVNO)に対する卸価格の引き下げが進み、どちらも料金水準が大きく引き下げられている。政権の狙い通りに事が進んでいるかにみえるが、思わぬところで面従腹背の動きが起きていた。自由化されたはずの端末(スマホ本体)販売において、大手キャリアは影響力を強く行使し、乗り換えを阻む要因となっている。(連続起業家、エンジニア、インターネットプラス研究所所長 澤田 翔)
菅義偉官房長官(当時)の「携帯電話の料金は4割程度下げられる余地がある」という発言を機に再編が進む、携帯電話の料金プラン。大手通信キャリア各社はオンライン契約を前提とした新しい料金プランを発表し、この3月より順次サービスを開始する。通信キャリアから設備を借り受けて事業を展開する「格安SIM」各社は卸価格の改定を前提に価格引き下げの動きが加速している。
こうした新しい通信事業者やブランドへの乗り換えを促進するため、SIMロックや契約拘束、値引きなどに対するルールを整備する動きが政府主導で続いている。ところが、大手キャリアは携帯電話の料金と直接関係のない「スマホ本体」の販売網に影響力を及ぼすことで、事実上、乗り換えしづらい環境をつくりだしている。筆者の体験をもとに問題点を考察する。