減価償却の金額分だけ、
現金収支差と税引き後当期純利益に差が生じる

林教授 間接法の営業キャッシュフローはこうなる。

カノン 利益剰余金の増加は税引き後当期純利益ですね。それから運転資本は(商品減少10─売掛金増加20─買掛金減少10)で計算できる。あれ、減価償却費が税引き後当期純利益に足されていますけど?

林教授 税引き後当期純利益は売上高から費用を差し引いた差額だったね。この費用の中には減価償却のように過去に現金の支出が完了して、当期にはお金が出ていかないものが含まれている。この金額だけ現金収支差と税引き後当期純利益に差が生じている。そこで税引き後当期純利益に減価償却費を足すんだ。

カノン ということは、他にも現金支出のない費用があればそれも足すのですか?

林教授 その通り。例えば固定資産売却損や有価証券評価損は、減価償却費と同じで現金は出ていかない

カノン わかりました。

林 總(はやし・あつむ)
公認会計士、税理士
明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授
LEC会計大学院 客員教授
1974年中央大学商学部会計学科卒。同年公認会計士二次試験合格。外資系会計事務所、大手監査法人を経て1987年独立。以後、30年以上にわたり、国内外200社以上の企業に対して、管理会計システムの設計導入コンサルティング等を実施。2006年、LEC会計大学院 教授。2015年明治大学専門職大学院 会計専門職研究科 特任教授に就任。著書に、『餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?』『美容院と1000円カットでは、どちらが儲かるか?』『コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?』『新版わかる! 管理会計』(以上、ダイヤモンド社)、『ドラッカーと会計の話をしよう』(KADOKAWA/中経出版)、『ドラッカーと生産性の話をしよう』(KADOKAWA)、『正しい家計管理』(WAVE出版)などがある。