昨年秋に初めての入札が行われた容量市場は、限界費用がほぼゼロの再エネが潤沢な世界への移行に必須のものだが、安定供給という公共的価値へのコスト負担に反発する声も上がる。今年初めの電力需給の逼迫や価格高騰は、わが国の電力供給が過度にLNGに依存していること、システム改革の中で燃料調達リスクが想定されていなかったことを露呈させた。それぞれ単発的な議論が行われているが、電力システム改革は現実を見極め、明確なプリンシプルを確立すべきではないか。(NPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員 竹内純子)
既存システムの打破から始まったシステム改革
昨年秋から、電力システム改革のあり方を問うような出来事が相次いでいる。電力安定供給に必要な設備を確保するための容量市場の初めての入札は高値に張り付き、年末年始の需給逼迫と、日本卸電力取引所(JEPX)での価格高騰は、今年に入って米国テキサス州で発生した電気価格の高騰と輪番停電よりはスケールが小さかったものの、電力小売り全面自由化の意義を問う十分なインパクトを持っていた。
さらに2月13日には、福島県沖を震源とする大きな地震により、関東近県で90万軒を超える停電が発生。わが国の自然災害の多さを改めて思い起こさせた。電力供給システムの健全性を維持しつつ、改革を進めることの難しさを考えさせられる。