再生エネルギー写真はイメージです Photo:PIXTA

東日本大震災で発生した福島第一原発事故よりも前から、日本の電力をめぐってさまざまな改革がなされてきた。原発事故だけでなく、気候変動や災害も電力の安定供給の大きなリスクとなる中、新電力も積極的にエネルギー安全保障の役割を担うべきだと、新電力側のキーマンが訴える。(合同会社エネルギー経済社会研究所代表取締役 松尾 豪)

「安い電力会社」を選べるようにはなった
さらなる変化を迫る脱炭素、IT

 電力システム改革は2013年に閣議決定された。電力の安定供給、電気料金の抑制、利用者の選択肢や他業種からの参入増加の3点が柱だった。筆者はこの改革は、エネルギー政策の大前提となるエネルギー安全保障(Energy security)、経済効率性(Economic efficiency)、環境(Environment)、そして安全性(Safety)のいわゆる「3E+S」のうち、経済効率性に重点を置いた政策である。

 東京電力など「大手電力」と呼ばれる旧一般電気事業者と、それ以外の「新電力」の公平な競争基盤を構築し、電力小売りの全面自由化によって、通信会社や鉄道会社、ガス会社など多くの事業者が新規参入したことで、一般消費者は「電力会社を選択できる価値」を享受できるようになった。

 また政府は、18年に閣議決定した「エネルギー基本計画」において、脱炭素社会の実現に向け、再生可能エネルギーを主力電源化する方針を打ち出した。

 さらに今後「Society5.0(IT技術を活用し、現実と仮想空間を融合して、経済発展と社会課題の解決の両立を目指す考え方)」時代を迎えるに当たり、データセンター需要の増加、熱・輸送の電化による電力需要の急増など、電源側と、電気を使う側の双方で大変激しい変化が予想されており、電力システムはこれらへの対応を求められている。