給付金Photo:PIXTA

新型コロナウイルス感染拡大の影響で資金繰りに苦しむ中小企業や個人事業主を救済するため政府の財政支援「持続化給付金」をだまし取る詐欺事件の摘発が昨年末から相次ぎ、今年に入って加速している。圧倒的に20代が多く、中には税務署や独立行政法人の国家公務員、有名大学の学生らも含まれる。詐欺罪は本来「だまし取る意思」の立証が必要で「返すつもりだった」と容疑を否認された場合、捜査当局は供述の嘘を突き崩さなければならず、立件が難しい事件とされる。しかし、今回は確定申告書などの公文書という証拠がバッチリ残っており、事業の実態がなければ一発でばれる杜撰(ずさん)な手口だ。手軽に大金を手にできるため、深く考えず出来心で手を染めた若者もいるようだが、実は発覚すれば「人生が詰んでしまう」悪質な犯罪だったのだ。(事件ジャーナリスト 戸田一法)

知人と共謀し
総額1000万円超

 1月下旬、プロ野球関係者の間に激震が走った。プロ野球南海(現ソフトバンク)で歴代最多の監督通算1773勝を誇る故・鶴岡一人氏の孫が島根県警に詐欺容疑で逮捕されたというニュースが、スポーツ新聞などで大きく報道されたのだ。

 逮捕されたのは慶応大4年(当時、現在は退学)で、野球部に所属し捕手として活躍していた鶴岡嵩大被告(22)=東京都港区、詐欺罪で起訴済み=。

 容疑は昨年7月、松江市の男子大学生が持続化給付金の受給対象ではないのに、個人事業主であるかのように偽装し給付金を申請するよう指南。中小企業庁から給付金100万円を男子大学生の口座に振り込ませて詐取したとしている。逮捕は1月26日付で、2月16日に松江地検に起訴された。