ウーマンラッシュアワー村本大輔──。沖縄の基地問題、原発、朝鮮学校についてなど、おおよそ今まで私たちが見てきた「お笑い」とはまったく違うものを、彼は舞台の上で繰り広げている。そんな彼がさまざまな地で見て、感じた“痛み”をつづったノンフィクション『おれは無関心なあなたを傷つけたい』が刊行された。「テレビに出ずに全国を回って人と話してきたのでそれを本にしました」と語るその本には、「2020年ベストワンの本」「泣きながら笑って読んだ」「この本だけは絶対に読んだほうがいい」と読者から絶賛の声が多数集まっている。今回は本書の刊行を記念して特別インタビューを実施した。村本大輔が語る、「知る」ことの楽しさとは?(取材・構成/川代紗生、撮影/疋田千里)

物事にはすべて「背景」がある

──本を読んで、さまざまの地へ実際に足を運び、貪欲に「知ろう」としている姿勢に驚きました。そこまで村本さんを動かす原動力とは、いったい何なのでしょう。

村本大輔(以下、村本) 「知ること」「聞くこと」の面白さですかね。僕は高校を中退しているんですけど、子どもの頃はすごく勉強が苦手だったんです。授業でわからないことがあったから何度も手をあげているうちに、だんだんクラスに失笑されて、先生もだんだんめんどくさそうになっていった。そのめんどくさそうな顔や失笑が怖くて、聞くのをやめたんです。それで結局勉強についていけず、高校を中退したんですよ。

 でも、お笑い芸人になってからAbemaTVの「ABEMA Prime」というニュース番組に出るようになって、わからないことをわからないと言ったり、素直に発言することを面白がってもらえるようになった。子どもみたいな質問にも「面白い視点ですね」と褒めてくれて、丁寧に教えてくれる人たちが周りにいて、「知ること」「聞くこと」の面白さを知っていったんです。

村本大輔(むらもと・だいすけ)
1980年生まれ。福井県おおい町出身。2008年に中川パラダイスとお笑いコンビ「ウーマンラッシュアワー」を結成。2013年に漫才コンクール第43回NHK上方漫才コンテスト、THE MANZAIともに優勝。AbemaTV「ABEMA Prime」を通じてニュースに触れ興味を持ち始めたことをきっかけに、原発や沖縄基地問題、朝鮮学校など政治・社会問題を取り上げた漫才をつくり、フジテレビ系「THE MANZAI 2017」で披露。劇場を主な活動の場にしており、積極的に全国で独演会を開催している。2021年2月16日(火)、22日(月)には、東京・大阪にて独演会「Without me~おれを排除してみな? お前たちおれなしじゃこの世界はとてもつまらないだろう」を開催予定。

「知ろう」と思うと、知りたいことって無限に見つかるんですよ。パッと夜空を見上げたら、「あの星って何だろう?」「行ってみたいな」「宇宙ってどんなところなんだろう?」って考えることありますよね。でも、空だけではなく、僕たちの生きる世界には表面的にはわからないバックボーンがいっぱいあるんです。

──バックボーンですか?

村本 たとえば、このあいだ、2回だけ飲んだことのある女の子が、給付金詐欺で捕まったんですよ。詐称して100万円を国から盗ったと、ニュースになっていた。「うわっ、この子、2回だけ飲んだあの女の子や」と思い出したんですよね。

 彼女は、すごく貧しい地域の出身でした。この日本においてびっくりする話なんですけど、彼女が小学生か中学生くらいの頃、同級生のお母さんが家の近くで張ってて、「〇〇のおばちゃんや。覚えてる? ちょっと家からおにぎりとか持ってきてくれない?」とか言われたこともあるんですって。そういう地域があるんですよ。

 そんな地域で育った彼女自身もシングルマザーになってお金に困り、働いてはいたけどコロナで仕事もどんどんなくなっていって、それで給付金詐欺に手を付けた。

 こうやって、問題の裏には必ず背景があるじゃないですか。背景や人を知ると、社会がなんとなく目の前に見えてくる。これって、ネットニュースの文章だけ追いかけてたらわからないわけですよ。物事にはすべて背景があって、表層的な部分をどんどん掘り下げて自分で知るっていうことは楽しいですよね。

ニュースを見ただけで判断するのは「思考停止」状態

 あと、「知りたい」っていう気持ちがあれば、「教えこまれること」から逃れられる気がするんですよね。

──「教えこまれること」ですか?

村本 のなかでも書いているんですけど、たとえばお父さんとお母さんの仲が悪い家庭があったとしますよね。そこでお母さんっ子が、お母さんからお父さんの悪口を聞いたら、お父さんのことを嫌いになるじゃないですか。「ええ? お父さんってそうなの?」って。でも、逆に、お父さんっ子がお父さんから話を聞いたら、お母さんのことを嫌いになるかもしれない。

 それって、国と国の話とかでも通じることだと思うんです。たとえば、日本と韓国の問題でも、韓国では韓国目線のニュースが流れるし、日本では日本目線のニュースが流れる。それぞれの目線が入ってるわけですよ。

 結局、ニュースでパッと教えられたことっていうのは、自分で見たものではないってことなんですよね。自分たちが相手の国のことを判断したいのであれば、相手の国のことを多少勉強するくらいの努力は必要じゃないですか。

──そうですね……私もふだん、ついニュースを見ただけで何かを判断してしまいがちです。

 だから、本当に知りたい気持ちがあったら、誰かやニュースに「教えてもらって終わり」じゃなくて、「本当はどうなんだろう?」って実際に行ってみて、会話すりゃいいわけですよ。それをせずに、すぐに自分の中で結論付けて「正義か悪か」を決めるのって、ちょっと思考停止じゃないですか? 学びに対して欲求がなさすぎる。ただ誰かに教えこまれたことで感情がたかぶって、相手を非難するだけになってしまってないかって思ったりするんですよね。

 だから、学ぶ、聞く、知っていくというのは、非常に大切だし、面白いことだと思うんです。そんなことも、この本から読み取ってもらえたら嬉しいですね。

【大好評連載】
第1回 だから僕は、社会問題をネタに漫才をする、本を書く
第2回 政治や社会問題を「重たい」と避けている不感症なあなたへ
第3回 民主主義を滅ぼす「意識どん底系」人間とは?