『ウィニングカルチャー 勝ちぐせのある人と組織のつくり方』ではチームや企業の組織文化の変革方法についてまとめています。本書の中で組織文化を変えたスポーツチームとして紹介している横浜DeNAベイスターズ。“負けぐせ”のある弱小チームが、どのように組織文化を変えていったのか。前編「「目標は日本一」と言えなかった横浜DeNAベイスターズが変わった」に続き、中編では少しずつチームの組織文化が変わり成果も出始めたベイスターズの歩みについて、チーム統括本部長の萩原龍大氏が語った。(聞き手、構成/新田匡央)
――インタビュー前編(「「目標は日本一」と言えなかった横浜DeNAベイスターズが変わった」)では、なぜ横浜DeNAベイスターズが、中竹竜二さんのトレーニングを受けるようになったのか、その狙いを伺いました。実際にトレーニングが始まった当初、スタッフやコーチの反発はありましたか。
萩原龍大さん(以下、萩原):ありました。多分、心の中では反発だらけだったでしょうね(笑)。「何で我々が、ほかのスポーツから学ばないといけないのか」「何でこの歳になってから、こんなことをしなきゃいけないんだ」「面倒くさい」「何で変わらなきゃいけないんだ」といった空気が、8割から9割を占めていました。
グループワークをするために6人でテーブルを囲んでも、「で、何か言われたけど、どうする?」という感じでしたね。
――嫌々受けていた、と。
萩原:嫌々どころか、何をしたらいいかもわからないし、心の中ではネガティブな反応しかなかったのではないでしょうか。一方で、このトレーニングを受けないとクビになるのではないかと、評価を気にしていたりもしていたようです。具体的に誰がどう思っていたかはわかりませんが、ネガティブな空気が充満していたことは間違いありません。
慶應義塾大学理工学部在学中にDeNAにてインターンとして採用、のちに社員として入社。新卒採用を中心に人事全般を経験。2011年のベイスターズ買収に伴い横浜DeNAベイスターズに出向。2013年シーズンまでコーポレート部門の長として球団全般の仕組みづくりを担当。2014年シーズンよりチーム統括本部へ異動、現在はチーム統括本部長。
――そんな状況から、「日本一になる」とみんなが心の底から信じられるようになった。ほかにどんな変化が起こったのでしょう。
萩原:チーム全体を覆っていた、「現状を維持したい」という無言の圧力のようなものが働かなくなったように思います。以前のチームには「なぜこれを変えなければならないのか」という前例踏襲、現状維持の考え方が蔓延していました。それが「これ、本当にこれでいいんだっけ」という言葉を使うようになりました。
「もっと良くするためにできることはないか」など、進化や変化に対するポジティブな言葉が聞こえるようになってきたんです。同じチームで、人もそれほど入れ替わっていないのに。
――選手と直接接するコーチやスタッフが変わり、選手もその影響を受けたことがポジティブな結果となり、近年の成果につながっているのでしょうか。
萩原:そう思いたいですね(笑)。ただ、それだけとも言い切れないのは、ドラフトで有能な若者が入ってくれば、それでチームはガラリと変わります。育成や教育だけでチームのすべてが変わった、とはとても言えません。
しかしとても重要なポイントであったとは思っています。感触としては組織のトップラインを劇的に伸ばすというよりも、ボトムラインのレベルを上げる効果はあったと感じています。
特に2014年に始めてからこれまでの取り組みは、主にボトムアップを意図していました。そして今、やっとトップラインを伸ばすようなトレーニングに取り組み始めたところです。
上位のマネジメント層の研修も一通り実施できましたし、若くして部課長クラスの仕事を任せられる人材も出てきたので、次世代の彼ら彼女らがマネージャーとして機能し、世界の最先端を走り続ける組織文化を築く、という長期的な取り組みです。