「勝つためのひきだし」が増えてきた

――2014年から中竹さんのトレーニングを受けて、もっとも変化した人はどんな人ですか。

萩原:たくさんいるので、誰か一人を抜き出すのは難しいかもしれません。ただ、現在グループリーダー(課長)になっている人たちは、特に変化した人たちだと思っています。今でも月に数回、トレーニングを受けてもらっていますが、すごく場が盛り上がります。

 みんな、話が止まらない。自分の悩みややりたいこと、学びたいことなど、もはやトレーニングという言葉が正しいのかもわからないくらい、言葉や意欲が飛び交うんです。それぞれが自分の部門を持っているにもかかわらず、集まるとチーム全体の話になっていますし。

――この人たちが引っ張るようにして、組織文化を変えているんですね。

萩原:これからしばらくは組織のトップラインを伸ばしていくフェーズです。また同時に、ファームのコーチを中心に、既存の練習メニューや選手へのコーチングを見直す取り組みなども始めています。アスレチック・トレーナーやデータサイエンティスト、バイオメカニストたちも一緒になり、選手に対してどんなコーチングをすべきか、そのための練習メニューはどう組むのか。そんなことも、見直しています。

 野球の練習メニューはこれまで見ている限り、とても簡単に決まっていました。積み重なった歴史がある故に、キャンプ中や練習日の練習メニューを決めるのも慣例通り、当てはめるだけに見えました。しかしラグビーでは、監督とコーチが練習メニューを決めるのに、3時間以上かけることもあると聞きました。

 あるとき、中竹さんがそれを研修中にスタッフやコーチに伝えると、彼らがその違いを知りたいと言いだしたんです。そこで、「やってみますか」と練習メニューを考えるトレーニングが始まりました。

 練習をより効果的に、効率的に。同じ時間をかけるなら中身の濃いものを。同じ練習をするならもっと時間を短縮する。そうすれば、もっと選手が成長し、チームも強くできると考えています。

――2014年からここまで取り組んできて、ベイスターズは強い組織文化に変わってきたという実感はありますか。結果だけを見ると強くなっていると思いますが。

萩原:結果だけを見ると、徐々にではありますが間違いなく強くなっています。

 ただ、これをまぐれではない状態にしたいんです。たまたま強い選手が集まったから勝ったのではなく、次から次へと強い選手が育って、レギュラー選手も常に背中を脅かされている。そんな状態が継続的に強いチームだと思っています。

 そして、少しずつそこに近づいている手応えも感じています。なぜなら、一人ひとりのスタッフやコーチ、そしてチーム全体を見ても、「勝つための引き出し」が増えているからです。

(インタビュー後編は2021年3月19日公開予定)