日本経済の牽引役で、エコプロダクツの代表格であるプリウスを製造するなど、日本企業の優等生であるトヨタ自動車が、リコール問題に揺れています。ダイヤモンド・オンラインにおいても、この件に関する記事は既に多く取り上げられていますので、ここで詳しく述べることは省きますが、これらの記事で共通して述べられているのは、「初動対応の遅れ」です。「トヨタほどの企業がなぜ?」と考えてしまいますが、優等生ゆえのジレンマに陥っていたのかもしれません。
米国においてトヨタは、米国車に比べ安全で壊れにくいという安全神話を築きマーケットを獲得してきました。また、低燃費であることや、プリウスに代表されるハイブリッド技術など、新しい時代の要請である環境面においても消費者のニーズを的確に捉えてきたことが、トヨタ神話を更に強固なものにしてきたのです。また、アカデミー賞など、さまざまなアワードの会場にプリウスで現れることが米国セレブのステイタスのようになり、それが大きくメディアで取り上げられることで、トヨタ神話のイメージは更に助長されて行きました。
今回のフロアマットやブレーキの問題などは、実はリコールではなく、違う方法でもよかったのではないか、という記事も見受けられます。しかし、消費者のトヨタへの期待値は、トヨタが優等生故にとても高いものになっており、完璧な対応が求められていたのだと思います。高い信頼ゆえの責務からか、トヨタにとっては、不具合を認めてこれまでの高い信頼を失うか、高い信頼を失うことを恐れしばし様子を見守るか、という優等生ゆえの「信頼のジレンマ」に陥っていたような気がするのです。
学生アンケートに表われていた
期待と現実とのギャップ
しかしながら、これだけでは、初動対応の遅れは説明がつきません。株式会社ジェイ・ブロードが「就職ウォーカーNet」に会員登録した全国の主要大学生に対し、「環境への取り組み」「消費者への情報公開」「従業員への配慮」の3点から企業のCSRイメージについて実施したアンケートには、初動対応の遅れにも繋がる興味深い結果が表れていました。
「環境への取り組み」についてのベスト3は、【1位】が食品メーカーのカゴメ、【2位】がトヨタ自動車、【3位】がパナソニックとなっており、さすがにこの分野においてトヨタは、感度の高い学生からも高評価を得ています。しかし、その他の項目については、意外な結果だったのです。
「環境への取り組み」で【1位】になったカゴメは、「消費者への情報公開」でも【1位】、「従業員への配慮」では【2位】といずれも高い評価を得ています。また、「環境への取り組み」で【3位】になったパナソニックも、「消費者への情報公開」で【3位】、「従業員への配慮」でも【3位】と、安定した高い評価を得ています。
では、「環境への取り組み」で【2位】になったトヨタはというと、「消費者への情報公開」では【14位】、「従業員への配慮」でも【9位】と、大きく順位(評価)を落としています。