その書面は、3親等内の扶養義務者に届く。親や兄弟は、自分自身の兄弟やおじ・おばなどからの「どういうこと?」という電話を、立て続けに受けることになるだろう。体面を重んじる地方名士を「ギャフン」と言わせるのには、充分である。

 もっとも筆者は、こうした内容の問い合わせに回答するとき、「本来の業務だけで大変な思いをしている福祉事務所を、そういうことで困らせないでほしい」と一言添える。そして現在のところ、紳士淑女である友人知人たちは、1人も実行に移していない。

「扶養照会」には、もともと壊れている親族の絆を木っ端微塵にする威力がある。このような利用が可能な「バグ」があるというより、今となっては存在自体が「バグ」になっていると見るべきであろう。

扶養照会の曖昧さに見る
厚労省の立ち位置とは

 福祉事務所にとっての扶養照会は、「法に定められた義務ではないが、原則、することになっている」というものである。生活保護の申請件数を抑制したい場面では、「申請したことが扶養照会によって親族バレしますよ?」という一言は、有効な武器となる。また、「扶養義務者が、本人を虐待した親やDV加害を行った配偶者である」など、「扶養照会を行わなくてもよい」とされる場面は存在するのだが、明確に「してはならない」と決められているわけではない。

 この曖昧さは、現時点までの厚労省自身の宿命でもある。生活保護は、必要に応じて利用されるべき制度であるが、国家予算を掌握しているのは財務省である。財務省は1950年から、一貫して生活保護の利用抑制を求めている。厚労省は「生活保護の利用は抑制すべき」と言える立場にはない。しかしながら、「暴力団関係者」「外国人」「働けるのに働かない人」「医療が無料なので無駄な治療を受けたがる人」といった分かりやすい対象をシンボルとして、利用抑制を促進してきた経緯はある。