生活保護の申請をよしとしない役所の「水際作戦」に、立ち向かう手立て生活保護申請を支援するウェブサービスが始まった背景には、役所での手続きに関する根深い問題が見て取れる(写真はイメージです) Photo:PIXTA

生活保護の申請書一式を
作成する新規サービス「フミダン」

 12月15日、一般社団法人・つくろい東京ファンドは、生活保護申請を支援するウェブサービス「フミダン」の運用を開始した。生活保護申請の高すぎる障壁を手の届くものにするための「踏み段」だ。

 アクセスすると、自分自身の基本情報、世帯の状況、収入の状況(就労収入を含む)、資産状況などの事項を入力するフォームが現れる。必須事項の記入が終了すると、申請する福祉事務所長宛の「生活保護申請書」「資産申告書」「収入・無収入申告書」がPDFで作成される。そのPDFを印刷し、当該福祉事務所に持参・郵送・FAXなどの手段で送付すれば、申請手続きは完了となる。

 実際には、この他に身分証明書や預金通帳を確認したり、それらに基づいて生活保護の可否判定に必要な調査を行ったり、本人の生活状況の確認を行うことが必要とされる。このため、「本人と福祉事務所が一度も接触せずに保護開始」というわけにはいかない。しかし生活保護は、申請の意思を明確に示した時点で「申請された」とされる。本来は、福祉事務所を訪れて、あるいは電話をかけて、氏名・住所などとともに「生活保護を申請します」と口頭で述べるだけでもよいのである。

 いずれにしても、生活保護を申請する意思が示された場合、福祉事務所は原則として2週間以内に生活保護の適用の可否を判断し、本人に文書で通知しなくてはならない。不足している書類や証明書は、申請から2週間以内に提示したり提出したりすることになるのだが、救済と調査の優先順位は、もちろん救済のほうが上だ。

 生活保護の対象となった場合、保護費は申請日に遡って支給される。アパート住まいの場合は、家賃補助も支給される。たとえば家賃を滞納しており、12月分の家賃を支払わないと退去を迫られそうな場合、年末年始の閉庁中の12月30日にFAXで生活保護を申請しておくことの意義は大きい。

 福祉事務所が対応できるのは1月6日以後となるが、保護費の家賃補助は12月分も給付される。家賃が高額な場合は、福祉事務所から転居を指導されることになるが、それでも当面、現在の住居や生活環境を維持することができる。