サントリー「やってみなはれ精神」やヤフー「爆速経営」に共通する優れた判断指針写真はイメージです Photo:PIXTA

アフターコロナの世界において、組織には「自走力」が不可欠だ。変化に強い「自走する組織」をつくる上で重要になるのが経営理念。社員それぞれが事業運営を進めていくためには、基盤となる共通の価値観が重要である。どうやって作っていけばよいのだろうか。SHOWROOMやYahoo!JAPANの事例を見ながら考えたい。(Almoha共同創業者 唐澤俊輔)

沈没しない組織に必要な三つの理念

 自走する組織では経営理念が重要だ。なぜなら、自走する組織は、大胆な権限委譲を通じ、各マネジャーやメンバーの判断で事業運営を進めるため、自由気ままにあさっての方向に組織が走ってしまう恐れがあるからだ。日々の意思決定が、経営陣が目指す方向と異なっていたり、部門により違う方を向いていたりしたら、組織は方向性を見失い沈没してしまう。

 経営理念を策定する上では、ミッション・ビジョン・バリューの枠組みで整理したい。

 まず、力を発揮するのが、組織としての大枠の方向性や目的を定めた「ミッション・ビジョン」だ(バリューについては後述する)。

 ミッションとは、「会社が社会に果たすべき使命」のことであり、企業の存在意義とも言える。対してビジョンとは、「(ミッションを実現するために)達成すべき中長期的な会社のありたい姿」のことを指す。

 近年では中長期のゴールとして、ビジョンを設定する企業も増えている。

SHOWROOMのビジョンはどうできたか

 ライブ配信サービスを提供するSHOWROOMでは、代表の前田裕二氏が、創業当初より「努力がフェアに報われる社会を創る」というミッションを掲げていた。しかし、2019年、私がCOO(最高執行責任者)として入社した当時、ビジョンはなかった。