日本の匿名掲示板として圧倒的な存在感を誇った「2ちゃんねる」や動画サイト「ニコニコ動画」などを手掛けてきて、いまも英語圏最大の匿名掲示板「4chan」や新サービス「ペンギン村」の管理人を続ける、ひろゆき氏。
そのロジカルな思考は、ときに「論破」「無双」と表現されて注目されてきたが、彼の人生観そのものをうかがう機会はそれほど多くなかった。『1%の努力』では、その部分を掘り下げ、いかに彼が今の立ち位置を築き上げてきたのかを明らかに語った。
「努力はしてこなかったが、僕は食いっぱぐれているわけではない。
つまり、『1%の努力』はしてきたわけだ」
「世の中、努力信仰で蔓延している。それを企業のトップが平気で口にする。
ムダな努力は、不幸な人を増やしかねないので、あまりよくない。
そんな思いから、この企画がはじまった」(本書内容より)

そう語るひろゆき氏。インターネットの恩恵を受け、ネットの世界にどっぷりと浸かってきた「ネット的な生き方」に迫る――(こちらは2020年3月21日付け記事を再構成したものです)

起業して必要だった「能力」

2000年代に、僕が運営をしていた「2ちゃんねる」というサイトは、どんどん大きくなっていった。

とはいえ、2ちゃんねるの事業で利益があがるわけではなく、トラブルが多くてビジネスとしては割に合わなかったかもしれない。

ひろゆきが語る「日本企業の残念すぎる病」ひろゆき氏(撮影:榊智朗)

当時、月250万円のサーバー代を捻出するために、バナー広告や出版でお金をまかなっていた。起業してうまくいっている人は、派手な能力ではなく、地味なやりくり能力や総務のような事務処理能力が必要だ

問題が起きたら、粛々と対処する。そこに、「好き嫌い」の私情を入れる余地はなかった。

そして、2008年には、2ちゃんねるのユーザーは1000万人を超えた。

平均年齢は30歳くらい。活字として消費されて、ネット広告も儲かり出し、僕の年収は1億円を超えた。

ただ、広告に頼るメディアは厳しくなる予感があった。新しいメディアが増えると、そのぶん食い合うことになり、薄利多売にならざるを得ない。

競争しないところまで行けるか?

たとえばユーチューブは、グーグルに買収されたことで、ある意味「何もしなくていい企業」になった。

潰れる心配もなく、競争して頑張る必要もない

ユーチューブがここまでの規模になれたのは、「著作権侵害コンテンツを見られたから」という理由がある。もちろん、削除依頼を出せば消されてしまうが、そこにはタイムラグがあるため、一時的には見ることができてしまう。削除依頼が来ないものは、ずっと放置され続けてしまう。

あなたもきっと、最初に見たユーチューブ動画は、テレビや映画、音楽など、著作権違反の動画だっただろう。

それを自分たちの売り物であるかのようにして、いまや世界一の動画サイトとしてブランディングしてしまったわけだ。

動画サイトが大きくなるためには、グレーな部分をひたすら攻めるしかなかったのかもしれない。

スティーブ・ジョブズとグレーゾーン

また、スティーブ・ジョブズが高校生だった頃に、無料で電話が掛けられる装置「ブルーボックス」を発明して大儲けした話は有名だ。

電話会社のシステムをハッキングして、電話料金をタダにしてしまうという、まさにグレーゾーンを攻めたビジネスだった。というより、明らかに違法であることを本人も認めている。

ブルーボックスという装置は、デザイン性にも優れていて、持っているだけでもカッコよかったという。まさに、後のアップル製品にも通じる考え方が表れていた。

こうやってインターネット界の覇者たちを観察していると、1つの結論に結びつく。

「物事は大きくなりすぎると、『共存』する」

ということだ。

「出る杭は打たれる」という言葉があるが、出すぎた杭は打たれなくなる

会社の中の社員も、1人だけが騒いでいるだけなら退職に追い込むことができるかもしれないが、1人1人が組合として大きい存在になってしまうと、共存をするしかない。

「数」を優先させてしまうのは、ビジネスの戦略としても正しい

「機能優先」という病

なぜ、日本人の多くが検索サイトに「ヤフー」を使うかというと、一度、習慣として付いてしまっているからだ。

パソコンを買ってきて、インターネットにつないだら、最初はヤフーのトップ画像が表示される。だから、使い続ける。

ソフトバンクの孫正義さんは、携帯電話事業に参入したとき、「電波がつながりにくい」という機能性の問題をいったん脇に置いて、格安の使用料でシェア拡大を優先させた

2ちゃんねるの利用者が増えたときの背景も、「匿名」という部分を変えなかったからだ。

匿名であることで、正直、やっかいな問題はたくさん増えた。しかし、やっかいな問題は置いておき、利用者が増えるほうを選んだのだ

日本は「機能優先」の病がある。

電化製品を見ていても、新しい機能を付け足したりしているだけで、それでは世界では戦えない。

まず、シェアを拡大させ、叩かれないほどに大きくする。機能で勝負するのはそれからだ。

うまくいっているときは、慎重に問題を1つ1つ解決するより、規模拡大を選んだほうがいいのかもしれない。それも、「1%の努力」の道だろう。