新型コロナウイルスの感染拡大により世界は一変した。世界中からスーパーエリートが集うハーバードはいま、この世の中をどう見ているのか。ハーバード大学/ハーバード大学経営大学院(ハーバードビジネススクール)の教授陣へのインタビューから、ポストコロナの世界、そして日本のあるべき姿を探る。
今回のインタビュイーは、コロナ禍で出版された近著『資本主義の再構築 公正で持続可能な世界をどう実現するか』が大きな反響を呼んだレベッカ・ヘンダーソン教授。コロナ禍の経営者に求められるリーダーシップについて聞いた。(聞き手/作家・コンサルタント 佐藤智恵)
コロナ禍のリーダーシップについて
あるインド企業の事例が示唆すること
佐藤 新型コロナウイルスの感染拡大が始まってから1年以上たちます。ハーバードビジネススクールでは、いまもリアルとオンラインを併用したハイブリッド授業が行われていると聞いています。ヘンダーソン教授の授業では、有事におけるリーダーシップについてどのような議論が行われていますか。
ヘンダーソン 今年はMBAプログラムの必修授業「リーダーシップと企業倫理」を教えています。私はこれまで、資本主義のあり方やサステナビリティについて考える選択授業「リイマジニング・キャピタリズム」を教えていたのですが、学長から「今年はぜひ必修授業を教えてほしい。コロナ禍のいまだからこそ、全学生に向けて『リイマジニング・キャピタリズム』の基本となる概念を伝えてもらいたい」と依頼されたのです。
パンデミックが起きて以来、必修授業「リーダーシップと企業倫理」では、新しい事例を取り上げ、コロナ禍のリーダーシップについて議論することが増えています。
最も象徴的なのが、インド企業「メトロポリス・ヘルスケア」の事例です。この会社はインド全土で健康診断や人間ドックサービスをリアルとオンラインで提供している大企業です。インドで新型コロナウイルスの感染拡大が始まるやいなや、インド政府はこの会社に「PCR検査を請け負ってほしい」と要請しました。