お金持ちになる人の考え方は、ここが違う

「お金持ちになるための方法」について、ここまでわかりやすく語られていた本が、いまだかつてあったでしょうか。『15歳から学ぶお金の教養 先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』が発売早々、話題を呼んでいます。「15歳から学ぶ」と謳われているとおり、とてもわかりやすく書かれていますが、見くびってはいけません。ベテランのビジネスパーソンが読んでも唸る内容なのです。「もっと若いときに読んでいれば……」と呆然とする人が続出中です。著者である奥野一成氏は、プロの投資家から約4000億円の資産を預かり運用実績を上げ続けるファンドマネージャー。数々の企業・ビジネスの盛衰を見てきた奥野さんは、「お金持ちになれる人」「なれない人」にはマインドに大きな差があると語ります。(取材・構成/川代紗生、撮影・疋田千里)

他人に働かされている人はお金持ちになれない

──奥野さんは今回の本で、「お金持ちになりたいなら、お金を求めてはならない」と書かれています。お金を追いかけて成功した人はほとんどいない、単にお金を求めても、お金は逃げていく、と……。ならば、どうすればお金持ちになれるのでしょうか。

奥野一成(以下、奥野):自分のためではなく、社会に対して、他人に対して「価値」を提供することです。私は、お金とは「ありがとう」のしるしである、と定義しています。

「ありがとう」の総量がお金で評価されるというのが資本主義の基本原則です。だから、お金がほしいからと自分の権利だけを考えていては、お金持ちにはなれないんです。世の中の多くの人に「ありがとう」と言われるにはどうしたらいいのかを考え続けられる人が、結果的にお金持ちになれるんですよね。

──社会に価値を提供し「ありがとう」を集められるようになるためには、働き方もシフトしていかなければならないだろうと思います。今回の本のなかでは「労働者2.0」という新しい働き方を提案されていましたよね。

お金持ちになる人の考え方は、ここが違う

奥野:はっきり言ってしまうと、ほとんどの人たちが「労働者1.0」=「働かされている」というマインドから抜けきれていません。上司から言われた指示に従うだけ。受動的で、主体性がないんです。

 ただ、これは仕方がない一面もあるんです。というのも、我々日本人はそういう教育しか受けてきていないんですよ。子どもの頃から「右向け右」で協調性を重んじられてきましたよね。今から約30年前、景気のよかった「モノの時代」、発展途上国だった日本が欧米に追いつくために一番求められたのは、「安価で統一性の取れた労働力」でした。アメリカで成功しているビジネスモデルを日本に持ってきて安価で大量生産すれば、どんどんモノが売れる。そのニーズに応えるためには、上の指示に従う金太郎飴のような人が必要だったんです。

 しかし、今は「モノ余り」の時代。「モノ」ではなく「アイデア」をつくる人が勝つ時代です。そんな時代に生き残れるのは「労働者2.0」=主体性を持って働ける人。「他人に働かされている」ではなく「自分が働いている」というマインドセットを持つ人。会社に「雇ってもらう」という受動的な心の持ち方をでは、いつまでたっても会社側にこき使われるだけです。

お金持ちになる人の考え方は、ここが違う奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)
京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実戦する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は約4000億円。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』 『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』など。