会社は時間ではなく能力を売るところだ

──起業家やフリーランスなど、個人で事業を興す人でなく、正社員であっても、この「労働者2.0」という働き方は必要だ、と。

奥野:正社員はもちろん、アルバイトも同じです。飲食店で時給1200円で働くにしても、「労働者1.0」のマインドのままだと「時間の切り売り」で終わってしまう。けれど「今自分がやっている仕事にはどんな意味があるんだろう?」と主体的に本質を考える努力をすれば、「食事をする間、お客様に気持ちよく過ごしていただく」ためにできることを探すようになる。そういうマインドで働いていると、自然と笑顔も出てくるし「不機嫌な顔をしている人はいないだろうか?」「常連のお客様、様子がちがうな」と、周りに気配りもできるようになってくる。店長に「今日のコーヒー、いつもと味が違うから、満足度が落ちているかもしれません」と問題提起もできるようになるかもしれません。

 そういう働き方を続けていると、お客様や周りの人からの信頼も厚くなってくる。「忙しくてシフトに入れない」と伝えたとしても「時給を上げるから、もう少し働いてくれないか」という話になるかもしれない。

「会社には自分の能力を売っているのだ。給料はその価値提供の当然の報酬だ」と、「働かされている」から一歩踏み込んだマインドを持っている人こそ、これからの時代で生き残っていけるでしょうね。

お金持ちになりたければビジネスモデルの本質を掴め

──まずは主体的に働く、自分の人生を自分で動かす、とマインドを変えることが必要なんですね。とはいえ、これまで「働かされている」感覚が強かった人がいきなり考え方を変えるのは難しいんじゃないでしょうか。「労働者1.0」から「労働者2.0」になるためのブレイクスルーポイントはありますか?

奥野:「お客様ファースト」で考えること。相手に価値を提供するためには、「お客様自身も気がついていない・言語化できていないニーズ」を見つける必要があります。お客様が本当にほしがっているものは、お客様自身に聞いても出てこないんですよ。だから、自分の頭で考えて、顧客の抱えている本質的な課題を見抜けなくちゃいけない。

──奥野さんは、本質を見抜くために、普段どのような考え方をしていますか?

奥野:ひとつの事象を見たときに、「抽象化」できるかどうか。これは、その人が出世できるかどうかを見極めるうえで、重要なポイントです。

──抽象化?

奥野:具体的なものを見たときに、抽象的に考える頭のつくりが必要なんです。「具体化→抽象化→具体化→抽象化」と無限ループのように繰り返していかないと、本質にはなかなか辿り着けない。

 ちょっと難しく聞こえるかもしれませんね。例を使って解説しましょう。たとえば、香水メーカー向けに香料を作っている会社って儲かるんですよ。お客様が香水を買うとき、ほとんどの人は「香り」で選ぶでしょう? 香水を買うのにパッケージだけで選ぶ人はあんまりいませんよね。アンケートによれば、80%の人が「香り」で香水を選ぶらしいのです。さて、ここで問題。メーカーが香水をつくるとき、「香り」を発する香料にコストの何%をかけていると思います?

──えっ!? 結構かかってるんじゃないんですか?

奥野:実は、香水の原価の5%くらいなんですよ。つまり、香料メーカーが儲かる大きな理由の一つは「価値とコストの非対称が起こっているビジネス」だからなんです。コストがそこまでかからないのに、お客様に大きな価値を提供できる。ならば、香料メーカーと同じように「価値とコストの非対称が起こっているビジネス」を探せば、そこは儲かるんじゃないか? 投資する価値があるんじゃないか?と見極められるわけです。これが具体化→抽象化→具体化の行き来なんです。

 さて、おさらいです。

・お金持ちになりたければ、まずは受動的な働き方をやめる。
・「お客様ファースト」で考え、時間ではなく能力を売る。
・「具体化→抽象化」のループをくりかえし、お客様の抱えている本質的な課題を探す。

 このステップで「労働者2.0」のマインドを身につけられれば、おのずとお金持ちへと近づいていけるはずです。

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