DX推進のファシリテーターには
「明るさ」が必要なワケ

――DX推進の際に必要になるファシリテーター役には、どのような人材が向いているか。

 とにかく「明るい」こと。明るいとは、笑顔というだけではない。先を見る眼があることや出来事をネガティブではなく、ポジティブに受け取る明るさ。つまり、前向きに変化していく現実を受容する力だ。

 なおかつ、情報がどんどん変化する中で、新しい情報を柔軟に取り入れようとする姿勢。これは外の情報だけでなく、参加メンバーのいろんな意見も取り入れることも含まれる。また、関係している人に興味や好奇心を持つことも大事になる。これらを総合して、私は「明るさ」と呼んでいる。

 今申し上げたようなことは、実は向き・不向きではなく、トレーニングをすれば誰でも身につけることができる。

――「明るさ」を身につけるために、具体的にはどのような能力を磨くべきか。

 一つは、周りの意見をしっかりと聞く傾聴する力。二つ目は、仲間と共創する力。三つ目は仲間をリスペクトする力。四つ目が、仲間の意欲や創造性を引き出す質問の力だ。こうした力を磨いていけば、興味や好奇心が開発されていく。

 まずは、物事を前向きに受け止める訓練をすることをお勧めしたい。人間は同じ過ちを起こさないように、ネガティブに考えるようにできており、ポジティブな考え方はトレーニングをしないと身につかないからだ。

 すごく単純な方法は、何か問題が起きても「それはちょうどいい」と口にすること。例えば、トレーニングとしてファミレスの店長役をするとして、店員から「大変です。お客様がドリンクバーの飲み物を飲み干してしまいました」と言われたときに、「それはちょうどいい」と答える。すると、そこからイノベーションが始まるようになる。つまり、「それはちょうどいい」とは、ピンチをチャンスに変えるという意思に基づいた反応だからだ。

 まずは言葉から心を作っていくことが大切。「それはちょうどいい」と言ってしまったからには、誰しも対策を一生懸命考えるようになるだろう。

 つまり、今までとは違った見方をする「リフレーミング」していくことが大切だ。他には、「もう」ではなく「まだ」を使う。「~しか」ではなく、「~まで」「~も」に言葉を換えるといい。