大陸側は準備万端整う
実はすでに北京-福州を結ぶ「京福高速鉄道」は開通している。そして、その先の支線となる福州-台北ルートは、第13次5カ年計画(2016-2020)に打ち出された「長期鉄道ネットワーク計画」のもとで着々と進行していた。
福州-台北ルートのカギとなるのが、台湾に最も近い大陸の島である平潭島とを結ぶ「平潭海峡大橋」(高速道路と高速鉄道に対応)だが、この16.34kmの大橋は2020年(10月に高速道が、12月に高速鉄道が)に開通した。
これにより、北京から直接延びる国道がついに台湾海峡の出口にまで及んだというわけだ。ここから122kmに及ぶ台湾海峡を経て、台湾の新竹の幹線道路と接続するといわれている。
2016年の段階における公式見解(第12期全人代福建地区代表の張兆民氏による見解)では、海底トンネルで結ぶ可能性が示されていたが、近年は橋を架けるという議論が目に付く。ちなみに、中国と香港を結ぶ「港珠澳大橋」は海上橋で橋梁部分が55kmあるが、仮に台湾海峡を結ぶ場合、大橋の長さは100kmを超える。日本建設業連合会の専門家によれば「100kmの橋梁は技術的にも理論的にも建設は可能」だとしており、残るは地形や地盤の条件次第ということになる。
橋が架かるとどうなるのか
橋が架かると、この先どのような変化が起こるのだろうか。これを予測するには香港がひとつの参考になる。
2018年、中国政府は、広東省と香港、マカオを統合したベイエリア地域(大湾区)を対象とする「粤港澳大湾区発展計画(ベイエリア計画)」を打ち出した。ベイエリア計画は、香港・マカオの経済社会を発展させ、また香港・マカオの市民が大陸に進出する機会をもたらすためのプラットフォーム建設といえる。計画には「一国二制度の実践内容を豊かにするもの」とうたわれている。
中国と香港の一体化は避けられない運命であり、香港は高速鉄道で大陸と結ばれた。すでに2011年12月に開通していた広州-深セン間とつなぐ形で、2018年10月に深セン-香港が開通、現在「広深港(こうしんこう)高速鉄道」が運行を開始している。
ほぼ同時に橋も架けられた。同年10月、広東省(珠海市)-香港(ランタオ島)-マカオ(花地瑪堂区)を結ぶ、世界最長の海上橋(全長55km)といわれる「港珠澳(こうじゅおう)大橋」が開通した。