現代のマネジメントとは一線を画す手法が話題となり、大ヒットを記録している『リーダーの仮面』。その本のなかでは部下とのコミュニケーションおいて「事実を突き詰めていく」「言い訳できない状態にする」ことの大切さが強調されている。
言葉だけを聞くと「メンタル的に追い詰めてしまうのではないか」とも思われるが、正しく実践すればメンタルを追い詰めることはないと言う。
上司と部下のコミュニケーションにおいて、何が部下を追い詰めるのか。成果を上げるために、どんなコミュニケーションが必要なのか。『リーダーの仮面』の著者であり、株式会社識学の社長でもある安藤広大さんに「上司と部下のコミュニケーションの神槌」を聞いた。(取材・構成/イイダテツヤ、撮影/疋田千里)

部下を追い詰める「ある言葉」

――『リーダーの仮面』のなかでは、部下に対して「言い訳をなくしていくコミュニケーション」の話をされていて、事実を突き詰めていくことの大切さを強調されています。必要なコミュニケーションである一方で、部下をメンタル的に追い詰めてしまうのではないか。そんな心配も感じられるのですが、その点について安藤さんはどう感じていますか?

安藤広大(以下、安藤):たしかに、そこは誤解のないように伝えておかなければならない部分です。
「言い訳をなくしていく」と言うと、「ダメじゃないか!」「どうしてできないんだ!」とキツく追い詰めていくイメージを持つ人もいますが、私が述べているのはそういうことではありません。

 感情的に圧をかけるのではなく、淡々と事実だけを拾って確認していく。そういうコミュニケーションです。

 もちろん、淡々と事実を確認することに「圧」を感じる人はいると思います。でも、そこで大事になってくるのが、事実の確認をして終わるのではなく、「次に何をすればいいのか」を明確にすることです。

 それをしないで、ただ事実の確認だけをして追い詰めていったら、メンタル的に追い込まれることも当然あると思います。

――ただ事実を確認して「どうしていいか、わからなくなる」ような追い詰め方はいけないということですね。

安藤:そういうことです。たとえば、数字が上がらない営業パーソンに対して「お前、もっと必死でやれよ」「どうして数字が上がらないんだ」と上司が言うとします。

 でも、部下にしてみればすでに必死でやっているつもりで、それでも上司から「必死さが足りないんだよ」なんて言われ続けると、部下はどうしていいかわからなくなります。

 これは、ただ精神的に追い詰めているだけで、事実の確認になっていません。

 その場合、たとえば「先月は何件訪問しましたか?」と聞いて、部下が「30件です」と答える。
 それで「売り上げ目標は達成できましたか?」と聞いて「いえ、60%の達成でした」と返ってくる。
 「では、今月は何件の訪問が必要ですか?」と聞いて「50件です」と部下が答える。
では、50件訪問をするために、何ができるかを次のミーティングで報告してください」と伝える。

――なるほど。お互いの気持ちや思いを語り合うのではなく、事実だけのやりとりですね。

安藤:言い訳を排除したコミュニケーションでもあります。純粋に事実を確認して、目標が未達ならば、何をすればいいのかを決めていく。

 そういうシンプルなコミュニケーションです。

 部下自身が「50件訪問する方法」を自分で見つけて、実行できるなら、それでいいですし、「できない」としたら、さらにもう一歩手前の目標を設定して、それを実現するために、何をすればいいのかを部下に考えさせる

 そういったコミュニケーションを淡々としていきます。

 実際にやってみるとわかるのですが、威圧的になるわけでも、精神的に追い詰めるのでもなく、ただ事実を確認して、目標に到達できるよう、具体的に何をすればいいのかを明確にしていくだけです。