なお、余談だが、MX-30の試乗会ではEVを活用したマツダらしい自操式車両(体の不自由な人が自ら運転するための補助装置が付いたクルマ)も用意されていた。「MX-30セルフエンパワーメント・ドライビング・ヴィークル(SEDV)」と呼ばれるこのクルマは、MX-30の特徴である観音開きドアを活用し、下肢が不自由な人が自身で自由に好きな時に運転して、どこでも行きたいところに行けるというコンセプトの自操式車両だ。体の不自由な人向けの手動運転操作のみならず、健常者の人が行う一般的な運転操作にも、簡単に機能を切り替えることができる。これは、MX-30シリーズとしては未発表だが、近く市販が予定されている。

 マツダは、すでに1961年に手動運転装置を開発しR360クーペに搭載、市販した歴史がある。マツダの3代目、松田恒次社長は足が不自由であったこともあり、すべての人にクルマを持つ当たり前の幸せを提供したいというのがマツダのDNAにある。このMX-30自操式車両は、そのDNAを継承したもので、約60年の時を経て、最新の技術によってよみがえったのである。

世界的な脱炭素の流れに
日本車各社もEV投入を計画

 さて、世界的なカーボンニュートラルへのトレンドは、自動車業界にも押し寄せている。電動車への転換の流れがスピードアップしており、欧米・中国のメーカーが相次いでEV転換の計画を打ち出している。

 現在開催中の上海モーターショー(4月19日~4月28日開催)では、トヨタが25年までにEVを15車種発売することを発表し、EVの新シリーズとして「bZ」ブランドを打ち出した。ホンダも中国初となるホンダブランドのEVを発表し、中国で5年以内に10車種のEVを投入する計画を掲げた。マツダもEV第二弾となる「CX-30EV」をワールドプレミアした。日本車各社でもEVシフトが加速してきている。

 先述の通り、マツダの量産EV第1弾のMX-30は、CO2規制が厳しくなる欧州で先行投入したが、ホームマーケットである日本でもEVモデルを投入し、今秋からは厳しい環境規制で知られる米国のカリフォルニア州でいよいよ発売される。

 マツダの電動化戦略は、「トヨタグループ」として同社の環境技術の活用を進める一方で、特定の車種においてはRE技術を活用した電動車を展開したり、福祉車両に転用したりするなどといった独自性を前面に出していくことになる。その中でも、マツダが蓄積してきた技術の粋が詰まったREを駆使したマルチ電動化技術の成否は、マツダの電動車の「独自性」そのものだけに、今後の行方に大きな注目が集まっている。

(佃モビリティ総研代表・NEXT MOBILITY主筆 佃 義夫)