人の採用は不器用でも大丈夫、
それよりも大切なのは人間性

人を育てる仕組みはシンプル知らない間に人が育つ、右肩上がりの経営術宗次德二(むねつぐ・とくじ)
カレーハウスCoCo壱番屋創業者
1948年石川県生まれ。74年喫茶店開業。78年カレーハウスCoCo壱番屋創業。82年株式会社壱番屋を設立し代表取締役社長に。フランチャイズシステムを確立させ、国内外の店舗で1400店を超え、ハワイや中国、台湾など海外へも出店し現在も拡大中。2005年5月に東証一部上場。1998年代表取締役会長、2002年役員退任。03年NPO法人イエロー・エンジェル設立し、理事長就任。07年クラシック音楽専用ホール「宗次ホール」オープンし、代表に就任。著書に『日本一の変人経営者』ダイヤモンド社、『独断』プレジデント社がある。

稲田 人の採用についてもお伺いします。中途採用もとられていますよね。

宗次 もう、圧倒的に多いですね。

稲田 中途採用していくと、「ちょっとどうかな……」と思う方が、結果的に入ってしまうことってありませんか?

宗次 それはありますよ。人はなかなか見抜けませんから。

稲田 見抜けないですよね。

宗次 数回会って話をしたくらいでは、人は見抜けないです。スーパーバイザー(複数の店舗を管理するチェーン本部のマネージャー)候補でも、「なんだ中身がないんだ」ってこともありました。実際に採用してからじゃないとわからないですよね。

稲田 ということは、まずは採用してみる、ということですか?

宗次 これはどう考えてもというのが明らかな人は、その場では採用できませんけどね。でも、成長している過程ではやっぱり人の数も必要ですから、「思わぬ力を発揮してくれるかもしれない」「急変してくれるかもしれない」という期待を込めて受け入れることもあります。それと、現場の社員は「100%、数年先にココイチで独立自営する」のを条件で採用しますしね。あと、本部スタッフに関しては、20数年前から新卒採用をやっています。

稲田 本部人員の採用を始めるまでには、少し時間があったのですね。

宗次 そうですね。まだ、30年にもなっていません。

稲田 本部を新卒で固めていこうということですか。

宗次 そうです。また、中途採用で入った方は、店舗で力を蓄えたり、実力を発揮したりした人の中から選りすぐりを本部に、スーパーバイザーに。そしてスーパーバイザーの中から、後の幹部候補が出てくる。そういう流れですね。

稲田 なるほど。辞めていただくときって、やっぱり大変な思いをされますよね?

宗次 ほとんどは自ら身を引きますね。早い人は朝礼が終わったらいなくなっていたり、昼の休憩で置き手紙を置いていなくなったり……。早く結論を出してくれて、お互いがいいんですけどね。

稲田 社風や現場の雰囲気に合わないということでしょうか。

宗次 特別、難しいことを要求する訳ではなく、いろはの「い」からやっていくわけですからね。そりゃ最初は年下のアルバイトさんから「そうじゃないでしょう」とか叱られて、悔し涙を流すような経験もありますよ。

稲田 筋の通った組織運営を目の当たりにして、「ここでは小ズルさが通らない」ってことが伝わるのでしょうね。

宗次 そういう裏表のある人は、やっぱり周りも否定しますからね。それに私たち夫婦は、まず絶対そういう人はダメです。やっぱり人間性の悪い人はよくないですね。不器用でも頑張れば、辞めさえしなければ、いずれ独立できます。みんな4~5年で独立しているところを、7~8年かかっても独立できます。人間性は大切ですね。