42歳でゴルフを始めたのが、唯一の失敗

人を育てる仕組みはシンプル<br />知らない間に人が育つ、<br />右肩上がりの経営術稲田将人(いなだ・まさと)
株式会社RE-Engineering Partners代表/経営コンサルタント
早稲田大学大学院理工学研究科修了。神戸大学非常勤講師。豊田自動織機製作所より企業派遣で米国コロンビア大学大学院コンピューターサイエンス科にて修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。マッキンゼー退職後は、企業側の依頼にもとづき、大手企業の代表取締役、役員、事業・営業責任者として売上V字回復、収益性強化などの企業改革を行う。これまで経営改革に携わったおもな企業に、アオキインターナショナル(現AOKI HD)、ロック・フィールド、日本コカ・コーラ、三城(現三城HD)、ワールド、卑弥呼などがある。2008年8月にRE-Engineering Partnersを設立。成長軌道入れのための企業変革を外部スタッフ、役員として請け負う。戦略構築だけにとどまらず、企業が永続的に発展するための社内の習慣づけ、文化づくりを行い、事業の着実な成長軌道入れまでを行えるのが強み。著書に、『戦略参謀』『経営参謀』『戦略参謀の仕事』『経営トップの仕事』(以上、ダイヤモンド社)、『PDCA プロフェッショナル』(東洋経済新報社)、『PDCAマネジメント』(日経文庫)がある。

稲田 宗次さんご自身としての失敗は、どんなことがありましたか?

宗次 私、失敗がないんです。「経営における失敗はゼロです」って言い切れます。右肩上がり経営のおかげで。ただ、日常的な失敗は山ほどあるんですけど、モグラ叩きのように解決しては、またひとつ……。経営以外の悩みなんて、他人には言えませんよね。業績だったら役員と打つ手を考えたりすればいいけど。

稲田 日常的な失敗は、いっぱいしているんですね? 実験的な試みは、躊躇なく行ったということなのでしょう。

宗次 細かい失敗はいっぱいしますよ。ただ、逆境だとか、ピンチに陥るような、そういう失敗はないですね。以前、しつこい記者さんがいて、「失敗談を特集したいので教えて欲しい。何もない訳ないでしょう」と迫られて。しつこいので、そのとき冗談半分で言ったのは、「42歳ぐらいの頃にゴルフをちょっと始めたんです。これが唯一の失敗です。創業者なのにゴルフをやったことは、今でも悔しいし、許せないんです」と答えました。

稲田 ゴルフをやったこと、そのものが失敗だったのですか?

宗次 私は、ゴルフは創業者がやる趣味じゃないと思っていますから。時間や、お金や、体力を使うでしょ。そんな暇があったら、会社や工場や店で一生懸命やっている社員達に、励ましの声でも掛けに行ってやって欲しいってね。でも、社員とやるゴルフは無条件で楽しかったですよ。たまにお得意先とやるゴルフもあったけど、そんな気を遣うゴルフなんてどうでも良いし。スコア100を切らない努力をしていましたからね。

稲田 100を切らない努力?

宗次 お得意先ですから、100を切らない。OBを出すとホッとしていました。ゴルフよりも、やっぱり経営に邁進する以外にないんじゃないですか。そうすれば、会社も人も育つし、内部留保も積み上げられる。そうなれば、まさかの事態が発生しても、それほど慌てなくても良いですもんね。

稲田 今は新型コロナウイルス蔓延のせいで対外活動ができなくなり、社内で過ごす時間が増え、結果的に経営に邁進しはじめた社長さんも多いですね。

宗次 それをね、ずっと続けるといいですよね。緩まずに。

(第4回につづく)

→第1回 心の底から頭を下げて「ありがとうございました」を言い続けるのが経営トップの仕事
→第2回 弱い部分を補完し合う役割を持った経営トップの夫婦関係銀行から全面的に応援された理由とは?

(文・北野啓太郎)