高速鉄道を含む世界の鉄道システム向けに列車の車輪を製造するフランスのSASヴァルデューヌ社は、過去数十年間、顧客にプレミア価格を請求してきた。しかしその戦略は、2014年に中国の国有複合企業に買収されたことで変わった。新たにヴァルデューヌの親会社になった鉄鋼メーカーの馬鞍山鋼鉄(MAスチール)は、市場支配を目指して価格を引き下げた。ヴァルデューヌの元経営幹部、ジェローム・デュシャンジュ氏は「一つたりとも注文を逃してはならないと言われた。この点は明確だった。彼らは経済的覇権の獲得に貪欲だ」と振り返った。ヴァルデューヌは現在、中国の工場で高速鉄道向け車輪を製造するためのノウハウを提供するとともに、規制の厳しい欧州の鉄道分野をはじめとする世界市場へのアクセスを確保することで、馬鞍山鋼鉄の大きな戦略目標の達成に貢献している。その過程でヴァルデューヌは、中国の政府系銀行から低利融資を受け、馬鞍山鋼鉄から1億5000万ユーロ(約197億円)の事業資金を得ている。
中国の製造企業、海外工場買収で貿易障壁を回避
「経済的覇権に貪欲」 政府支援を受けた国有企業、欧米で競合社を買いあさる
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