「皮を剥いたリンゴ」と利益を143%増にした飲食店店長
私はよく、仕事は「皮を剥いたリンゴ」だと表現する。
皮を剥いた新鮮なうちはリンゴも美しいし、おいしいし、エンザイム(酵素)が豊富で健康的だ。
ところが、そのまま放置しておくと、リンゴは酸化して変色していく。
すると見た目も悪くなって食べる意欲が落ちていく。
リンゴと同じで、仕事ははやくとりかかったほうが間違いなく健康的なのだ。
Kさんに「絶対達成」という表現を使うと、うまくペーシング(ペースを合わせること)ができなかった。
Kさんには、とても強い言葉に聞こえるからだろう。
だから私は「皮を剥いたリンゴ」の話をした。
するとKさんは、それだけですごく納得してもらえたようだった。
それからKさんは、イタリアから「皮を剥いたリンゴ」をモチーフにした絵を買ってきて、お店に飾った。
さらにオーナーと行動計画をつくると、Kさんはリンゴの絵が入ったイラストペーパーに印刷するのだ。そしてその行動計画を「皮を剥いたリンゴ」だと思い込むようにした。
その効果からか、少しずつKさんの「先送りプログラム」が解消されていった。
月に1回、店員とメニュー開発を実施し、常連客を招待して試食会を開き始めた。
そのためのビラづくり、アルバイト店員の教育なども手がけ、9ヵ月で9回メニューを開発を実施したのだ。
そしてのべ100人以上のお客様に試食してもらい、一番評価の高かったメニューが、のちに看板メニューとなり、店の売上を押し上げた。
売上は前年対比107%アップし、利益は143%も上昇したのである。
Kさんは、いまでもリンゴの絵のついたイラストペーパーに、行動計画を印刷して持ち歩いているそうだ。
「先送りプログラム」を治療できないと……
期限ギリギリまで先送りしたあげく、「面倒」な感覚が膨れ上がりすぎてしまい、「やらない」という決断に踏み切ってしまう人もいる。
そのメカニズムはこうだ。
コラム第3回の「『自分探し』をする前に『目の前のこと』をやれ!」で書いたとおり、人間には「一貫性の法則」というものがある。
過去、自分がしてきたことは一貫して正当化したくなるものだ。
つまり、依頼された仕事に手をつけず、そのまま放置しておくと、放置しておいた期間を正当化したくなるので、放置期間が長ければ長いほど、その仕事に対する疑念が湧いてくる。その変化は以下のとおりだ。