「親はあまり心配しすぎず、子どもが自ら食べることを信じること」「親はあまり心配しすぎず、自分の体に必要なものを子どもが自ら食べることを信じること」 Photo:Serenity Kids

今年の2月、米国のベビーフードメーカーの大手4社が、自社商品に高レベルの有害金属が含まれると知りながら商品を販売していたことが判明。これまで当然のように売られていたベビーフードの原材料の透明性や栄養価に対して、消費者は注意深くなっています。そのような中、米国のスタートアップ「セレニティ・キッズ」のベビーフードの人気が急騰中。創業者のジョー・カーさんに、お話を伺いました。「現代の消費者は『ethical product』を求めている」――。このように語り、海外展開も視野に入れているジョーさんの夢とは?(フリーライター 三橋ゆか里)

昔からのベビーフード業界に
新たな潮流が起きている

 加工食品は私たちの食生活にすっかり定着していますが、こと「乳幼児の食事」に関しては、市販の商品を食べさせることをジャッジする(批判する)社会の風潮があります。

 その結果、母親が子育てに罪悪感を感じる「mom guilt」に陥る可能性があることを、父親は知っておかなければなりません。

 社会の目が変わらない限りこうした罪悪感は付きまといますが、たとえ市販品でも栄養価の高いものを使えば、mom guiltの緩和となり、母親の心の安らぎにもつながるはずです。

 わが家では、以前の記事でお伝えしたように、次男の食事を、従来型の離乳食とベビーレッドウィーニング(手づかみ食べを主とした方法)の混合で行っています。その際に使うピューレ(野菜や果実をすり潰した食品)は市販品に頼りたいのですが、米国(筆者はラスベガス在住)のピューレは果物ベースのものが多く甘いため、少し敬遠してしまいます。

 そのような中、ホールフーズ・マーケット(Whole Foods Market)やスプラウト・ファーマーズ・マーケット(SPROUTS FARMERS MARKET)などのオーガニックスーパーで最近よく見かけるようになったのが、米国のベビーフード業界のスタートアップ「セレニティ・キッズ(Serenity Kids)」のパウチタイプ(ピューレ)の商品です。

創業者のジョー・カー夫妻と娘のデラちゃん創業者のジョー・カー夫妻と娘のデラちゃん Photo:Serenity Kids

 米国のベビーフード業界は、1920年代からある古い業界ですが、コールドプレス(低温圧縮)方式を用いた「Once Upon a Farm」や、新鮮さに重きをおいた「Yumi」などのベビーフードがここ数年、台頭しています。ただ、要冷蔵・冷凍の商品が多く、主原料はやはり果物や野菜です。

 セレニティ・キッズが、代表的なパウチ商品の栄養価を自社調査したところ、お肉を使用しているオーガニックベビーフードはわずか4%以下にとどまりました。とり肉やバイソン(アメリカヤギュウ)、サーモンといった動物性タンパク質を、携帯に便利な常温のパウチとして提供する同社は、革新的な存在だといえます。大手メーカーの商品で埋め尽くされるベビーフードの商品棚で、動物性タンパク質が主役の商品は一際目立ちます。

 米国のベビー業界のスタートアップの多くに共通しているのが、創業者が「scratch your own itch」(かゆいところを自分でかく)、つまり「自分が解決したい問題に取り組んでいる」こと。

 今回、娘さんのためにご夫婦でこの「セレニティ・キッズ」を立ち上げられたジョー・カー(Joe Carr)さんに、お話を伺いました。