ANAグループの中核会社である全日本空輸(ANA)の昨年度のボーナスは夏冬合わせて1カ月だった。今年度、会社はついに夏冬ゼロを提案。それほどまでに業績は悲惨で過去最悪の大赤字となり、借金は倍増。むしろこの1年でなぜつぶれずにいられたのか。(ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)
夏冬ボーナス不支給提案で
年収3割減からさらに落ち込む
ANAグループの中核会社である全日本空輸(ANA)は、2021年度の夏と冬のボーナス(賞与)を支給しない方針を固め、労働組合に提案した。新型コロナウイルスの感染拡大で業績が悪化したためだ。
ANAはコロナ禍を受けて従業員の月給と賞与のカットで人件費削減を進めてきた。10~19年度は毎年、夏と冬合わせて月例賃金の4~6カ月分を支給してきたのが20年度は夏1カ月、冬ゼロ。管理職の月給は職務等級によって8~15%カット、非管理職は一律5%カットされ、年収で約3割減。年間賞与ゼロとなれば、年収はさらに落ち込むことになる。
対して日本航空(JAL)は今のところ、従業員の月給には手を付けていない。賞与では20年度に夏1カ月、冬0.5カ月を支給。11年前の破綻以来、年間支給額で初めてANAを上回った。21年度賞与について会社側はまだ検討中だ。
ANAの賞与ゼロ提案や、JALと間に生じた差は、21年3月期(20年度)決算を見れば腹に落ちるものだ。ANAグループの財務体力はJALを下回り、つぶれずにいるのは綱渡りをしたからに他ならなかった。