インド経済は急回復から一転急減速へPhoto:Hindustan Times/gettyimages

新型コロナウイルスの変異株が猛威を振るうインド。感染は再拡大し、前回のピークを大きく上回る。財政金融政策総動員もあり、年明けまで急回復を見せていた経済にも急ブレーキがかかる。通貨ルピーは下落しており、輸入物価上昇からくるインフレ圧力で金融引き締めとなれば、いっそう減速に拍車がかかりかねない。(第一生命経済研究所 経済調査部 主席エコノミスト 西濵 徹)

政策総動員、世界経済回復で
20年10~12月期はプラス成長に復帰

 インド経済を巡る雲行きは急速に怪しくなっている。

 昨年のインドは、新型コロナウイルスのパンデミックを受けて国内でも感染拡大の動きが広がり、政府が突如全土を対象とする外出禁止令を発令したことをきっかけに、都市部で失業した出稼ぎ労働者が地方に帰省した。そのことで結果的に全土に感染が広がる事態を招いた。

 さらに、全土での外出禁止令を受けて近年の経済成長のけん引役となってきた家計消費をはじめとする内需は大きく落ち込んだ。景気は過去に例を見ないペースで急激に失速した。

 ただし、その後は感染収束に程遠い状況が続いたものの、政府は感染状況が深刻な地域を限定して行動制限を課す一方、経済活動の再開にかじを切った。加えて、政府および中央銀行は財政および金融政策を総動員して景気下支えを図る動きを見せた。

 世界経済の回復を追い風に外需を取り巻く環境が改善したこともあり、景気は一転底入れした。結果、昨年10~12月の実質GDP(国内総生産)成長率は前年同期比0.4%増とわずかながら3四半期ぶりのプラス成長に転じるなど、早くも新型コロナウイルスの感染拡大による影響を克服する動きを見せた。