会見の席でのKDDIの高橋誠専務(左)と住友商事の大澤善雄専務。両社の胸中は複雑だろう

 住友商事とKDDIがケーブルテレビ業界最後の大再編に乗り出した。

 両社は傘下のケーブルテレビ業界トップ、ジュピターテレコム(JCOM)の市場に出回る約30%の株式を、公開買い付け(TOB)によりすべて買い取ることを明らかにした。

 上場を廃止した上で、来秋までに業界2位のジャパンケーブルネット(JCN)をJCOMと統合する方針で、売上高5000億円規模、市場シェアの半分を占める一大メディアが誕生する。

 KDDIの狙いは、NTTグループに対抗するため、全国の固定回線網と顧客を押さえ、囲い込みを図ること。実際、携帯端末と固定回線をセットで割安に販売するサービスが好調で、無線とケーブルのネットワークを有効に利用することにもつながる。エリアも首都圏で重なり合っているため、コスト削減などの統合効果は高い。

 しかしながら、思わぬハードルがある。それが筆頭株主の住商の立ち位置だ。今回、住商は現金を拠出しないスキームにもかかわらず、KDDIと共に50%ずつ株式を持ち合い、CEOも両社から出す。新会社はKDDIの連結子会社になるが、住商は引き続き主導権を握ることになる。

 もともと両社は犬猿の仲。JCOMは、1995年に住商と米最大手のケーブルテレビ会社との合弁で設立、地方局を次々と買収して急成長を遂げたが、2010年に合弁契約の期限切れの間隙を縫って、KDDIが経営権取得に名乗りを上げた。

 その際、住商は1株13万9500円と破格の値段でTOBを行い、総額約1200億円の追加出資をしてまで経営権を奪い返したという経緯がある。

 それから2年半たち、トップも交代して雪解けの感はあるが、投資回収は住商の他事業と比べ進んでいない。足元では8万円前後の株価が続き「簿価と時価の差がこのまま続けば住商は減損処理しなければならない状況」(商社担当アナリスト)で、JCOMを売り抜けるタイミングとみられていた。それなのに手放さなかったのには事情がある。