足許で、自動車産業に関する経済ニュースが増えている。米国の「BIG3」の経営状況悪化懸念や、トヨタ自動車の2009年3月期業績見通しの大幅下方修正など、有力自動車会社が実体経済や株式市場に大きな影響を与えるようなニュースが、毎日のように流れている。
このような背景にある要因は、言うまでもなく米国金融危機に端を発する世界的な傾向後退により、「自動車」に対する需要が落ち込んでいることだ。
しかし、それに加えて、実は「主要先進国の人口構成の変化などによる社会構造の変化」という根本的な要因があることも見逃せない。
自動車産業は裾野の広い産業であり、20世紀を通して最も重要な産業分野の1つだった。欧州で礎を形成した自動車産業は、20世紀初頭に米国に渡り、大量生産によるコスト低減によって、自動車を一般庶民が買える製品にすることに成功した。
その結果、長期間にわたって、自動車産業は米国の基幹産業たる地位を維持し続けたのである。その象徴が、米国の誇る大手自動車メーカー3社=BIG3(GM、フォード、クライスラー)だ。
ところが、隆盛を極めたBIG3の時代も永遠には続かなかった。生産効率化への取り組みが不足したことに加え、ハイブリットなど新しい技術の開発が遅れたことなどが重なり、次第にトヨタ自動車をはじめとする日本の自動車メーカーから追い上げを受けることになる。
不況要因は金融危機だけにあらず
構造問題は「自動車需要の2極分化」
その失速を決定的にしたのが、昨今の原油価格の高騰と、米国経済の顕著な減速だ。米国内での自動車販売台数は目に見えて落ち込み、金融市場の変調も重なって、GM(ゼネラル・モーターズ)の資金繰りに大きな悪影響が及んでいる。
一部専門家は、「すでにGMは、その命脈を政府に委ねる存在になっている」と指摘しており、今後オバマ新政権が同社をどのように扱うかに注目が集まっている。
ただし、救済策が実施されて各社が一時的に息を吹き返しても、本業の自動車が売れなければ、いずれ事業の継続が難しくなるのは明白だ。市場関係者のなかには、「オバマ政権の出方にもよるが、最悪の“Xデー”がいつ訪れても驚かない」と指摘する専門家さえいる。