日本の鉱工業生産指数は、7月、8月とも対前年同月比でマイナスになった。この大きな原因は、日本の対中輸出が減少していることであるとされる。そして、その原因は、ユーロ安によって中国の対EU輸出が減速していることだとされる。

 以下では、この理解が正しいものかどうかを検討する。

 本稿の結論は、「日本の対中輸出を減少させている基本的な原因は、ユーロ安による中国の輸出減ではなく、中国への直接投資の減少による中国輸出産業の投資減である」というものだ。

 中国への直接投資を減少させている大きな原因の1つは、ユーロ危機による投資家の「リスクオフ」行動だ。ユーロ危機は、ここでも国際的な資金移動を攪乱することにより、実体経済に大きな影響を与えていることになる。

中国の輸出と
経済成長が減速している

 最初に、最近の経済データを確認しておこう。

 2011年の中国の実質GDP成長率は9.2%となった。政府目標である8%成長は達成したものの、10年の10.4%を下回った。12年に入っても緩やかな低下が続いており、12年第1四半期の実質GDPは前年同期比8.1%増にとどまった。国際通貨基金(IMF)は9日発表した半期経済見通しの中で、中国の2012年経済成長率見通しを、7月時点予想の8%から7.8%に引き下げた。

 中国の12年1~8月の輸出入額の対前年比は、図表1に示すとおりである。対EU輸出は、マイナス4.9%となっている。

 他方、日本の対中国輸出の対前年同月比は、11年10月以降(12年5月を除いて)10%近いマイナスを続けている(8月にはマイナス10.0%)。

 8月の鉱工業生産指数は、前月比マイナス1.3%(前年同月比はマイナス4.3%)と、2ヵ月連続の低下となった。