新築鉄筋コンクリート造が最も強い手札

 木造新築の建て売り住宅を住宅ローンで買うのは論外だ。買った瞬間に債務超過であり、ローンをせっせと返したあとも土地価格のみの担保評価しか残らない。

 木造ボロ家投資は少し特殊だ。激安価格で購入した場合、ほぼ土地価格で購入していることになるので、残債が減れば土地価格分プラスになる。

 ただし注意が必要なのは、数字では不動産評価額があるように見えても、実際に売却できるかどうかはわからない。過疎化が進む地域のボロ家を買い取ってくれる人がどれほどいるだろうか? 固定資産税を払い続けて建物の維持管理費用を出してまで、欲しい人がどれほどいるかを考えるべきだ。

 このグラフが示すひとつの答えは、新築鉄筋コンクリート造が最も強い手札ということだ。ただし投資額も大きくなるのと建設期間中のキャッシュフローを我慢する必要があるため、参入障壁が一般の投資家には高いのだ。

 ではどうするか? 答えは自己資金が十分に出来た段階で新築RC造の好循環に乗るか、耐用年数が30年以上残っている優良な鉄筋コンクリート造の中古物件を買い、NOI(実質収益)を高水準に保つ工夫をして家賃収入を貯めつつ、売却益をねらうのだ。

 新築鉄筋コンクリート造を仕込めるほどの十分な自己資金をどうやってつくればいいの? という質問が聞こえてくる。

 あとで紹介する予定だが、自己資金をつくるためには一物件ステップを踏むのも手だ。最初に軽めの物件で家賃収入を貯めつつ、売却益が出せる投資を実行すれば十分な自己資金がつくれる。

 まとめると、建物の構造形式を選ぶということは、物理的なデザインを決めること以上に建物価値を市場の原理と銀行の都合の観点からデザインすることに他ならない。

上田真路(うえた・まさみち)
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。