このごろ、上空の騒音が気になるようになった。宝山製鉄所で知られる上海市北部の宝山区には、中国人民解放軍の海軍飛行編隊が管理する大場飛行場がある。どうやらここを離発着する軍用機が増えたようだ。
人民解放軍の主な幹部人事も入れ替わった。中国国防省は10月25日、人民解放軍の新人事を発表、総参謀長に房峰輝・北京軍区司令官(61歳)、総政治部主任に張陽・広州軍区政治委員(61歳)など4名が、空軍トップの空軍司令官には馬暁天・副総参謀長(63歳)が就任すると伝えた。
これまで軍高官といえば70歳前後が相場だったが、いずれも60歳を過ぎたばかりの壮年だ。上海市民はこの人事に、影響力を維持したい胡錦濤氏の思惑を読み取る一方で、空軍と海軍の強化を「日本との開戦準備だ」に結びつけている。
上海市民の日常生活にも変化が現れている。テレビ番組は戦場モノが従来に比べて一段と増えた。今や複数のチャンネルで放映される戦争ドラマには、日中戦争をテーマにしたものもある。熟年層はこれに見入り、また、若い世代はネット上で尖閣交戦を描いたゲームサイトに興奮する。
昨今は新聞もよく読まれるようになった。日中関係の先行きを暗示する刺激的なタイトルに、年齢問わず市民は敏感に反応する。
ご町内の夫婦げんか、その仲裁の言葉すら変わった。双方が危うくつかみ合おうとするその瞬間、背後から上がったのは「殴るなら日本人を殴れ」という冗談まじりの野次だった。「我々の敵は誰なのか、考えてみろ」という意味だ。
反日はフェードアウトしたのか?
上海市民を襲う「新たな不安」
日本では「反日の動きは落ち着いたようだ」「日本で報道されるような危険はないようだ」という楽観的な見方が強い。反日デモから1ヵ月以上も経った上海では、確かに騒ぎは収まっている。