コロナ禍で入場制限と時短営業をしている東京ディズニーリゾート。2020年度の決算は赤字に陥った。しかし「集客できず大赤字になった」とは単純に言い切れない興味深い点がいくつもある。(桜美林大学教授 山口有次)
過去最大750億円を投じて
新エリアができるも大赤字
2020年9月28日、東京ディズニーランド(TDL)に過去最大の投資額750億円を投じた過去最大4万7000平方メートルの新エリアがオープンした。映画『美女と野獣』をテーマにした世界初のアトラクション「美女と野獣“魔法のものがたり”」と「ベイマックスのハッピーライド」を中心に、アトラクション3カ所、飲食施設3カ所、ショップ2カ所を新設。映画の風景が随所に広がり、エリア全体でストーリーを体験できると好評を博している。
とはいえ、この新エリアを体験できる人は、残念ながら限られている。TDLと東京ディズニーシー(TDS)を含む東京ディズニーリゾート(TDR)は、新型コロナウイルスの影響で、長らく入園者数の制限を行っているからだ。
TDRは昨年、政府の営業自粛要請を受けて2月末から6月末まで休園。その間、米ウォルト・ディズニー社と感染対策を徹底した運営方法を検討し、7月に営業を再開した。遊園地・テーマパーク業界共通のガイドラインに沿い、チケットの事前予約制を導入。入園者数を収容定員の50%以下に制限した。その後、「Go To トラベル」が本格化し、また、ガイドラインが緩和されたことで1パーク2万人を超える運営となり、かつてのにぎわいを取り戻しつつあった。
ところが、年が明けた21年1月12日から再び緊急事態宣言が発令され、入園者数は1パーク5000人以下に、宣言解除後の3月22日からは同1万人以下に制限された(4月1日以降は頻繁に変動している)。
休園と入場制限に見舞われた20年度(20年4月~21年3月)の入園者数は756万人で、前年度の2901万人から大きく落ち込んだ。単純平均した1日当たり入園者数は、2パークで8.7万人から2.8万人に激減した。
TDRを運営するオリエンタルランドの20年度決算は、当然ながら大変厳しい結果になった。テーマパーク事業売上高は約1343億円(前年比65%減)、営業利益は420億円の赤字に転落。12年度以降、売上高営業利益率は20%を超えていたが、大幅な赤字を余儀なくされた。
コロナ禍のTDRが「集客できず大赤字になった」と単純に言い切ることは簡単だ。しかしながら決算データをつぶさに分析すると、そうとは言い切れない興味深い点がいくつも見えてくる。