10歳から17歳の青少年を対象に内閣府が2019年に実施した「青少年のインターネット利用環境実態調査」によれば、小学生の81.7%、中学生の76.4%、高校生の78.7%が、スマホやタブレットなどでゲームをしている。つまり、青少年の約8割がゲームをしている。もしゲームが知的発達を阻害するとしたら、これは無関心ではいられないはずだ。

 ゲーム依存というほどでなくても、ゲームをすることが脳の発達に悪影響をもたらすことは、しばしば指摘されている。そうした情報が広まったせいか、子どもの将来を考えてゲームやインターネットの利用を制限する親が多くなっており、8割の親が何らかの制限をしているといった調査データもあるが、ゲームをやりたがる子どもとのやりとりが面倒で、つい根負けしてしまう親もいる。

 では、ゲームは脳の発達にとってどれくらい有害なのだろうか。

ゲーム後30分は脳が働かない状態に

 脳科学的手法で認知機能の発達を研究している川島隆太と横田晋務たちの研究グループは、5歳から18歳の子どもや若者を対象に、3年間の間隔を空けて脳の画像を撮影し、知能も測定して、ゲームをする時間が脳の形態や認知機能に与える影響について検討している。

 その結果、ゲームをする時間が長いほど、語彙力や言語的推理力に関連する言語性知能が低いことが明らかになった。

 また、驚くべきことに、長時間ゲームをする子どもの脳は、脳内の各組織の発達に遅れがみられることがわかった。脳画像からは、記憶や自己コントロール、やる気などを司る脳の領域における細胞の密度が低く、発達が阻害されていることが明らかになった。

 さらには、ゲームで長時間遊んだ後の30分~1時間ほどは、前頭前野が十分働かない状態にあり、その状態で本を読んでも理解力が低下してしまうということを示すデータも報告されている。ゲーム中には、物事を考えたり自分の行動をコントロールしたりするのに重要な役割を担う前頭前野の血流量が少なくなり、機能が低下してしまうのだろうという。