スカイマークは6月21日、ゲーム「ポケットモンスター」の人気キャラクター「ピカチュウ」とコラボレーションした「ピカチュウジェット BC」の運航を始めた。老若男女が注目するピカチュウジェットで「明るく上昇」したいところだが、スカイマークの経営環境は依然として厳しい。大別すると財務・上場・機材の三つの問題を抱えている。(ダイヤモンド編集部 柳澤里佳)
版権使用料タダ!
ポケモンの大盤振る舞い
スカイマークは6月21日、ゲーム「ポケットモンスター」の人気キャラクター「ピカチュウ」とコラボレーションした「ピカチュウジェット BC」の運航を始めた。同社初の全面ラッピング(特別塗装)機で、沖縄県の那覇・宮古(下地島)発着路線を中心に約5年間、全国各地へ飛ぶ予定だ。
コラボ企画を持ち掛けたのはポケットモンスターのブランド管理会社であるポケモン側で、「人と人、人と地域をつなぎ、観光・航空事業への貢献を目指す」を趣旨に「そらとぶピカチュウプロジェクト」を発足した。「この環境下でどうやったらポケモンが社会貢献できるのか、社内で有志を募ってプロジェクトを立ち上げた。70の企業や自治体と長期に取り組んでいく」(石原恒和・ポケモン社長)。スカイマークを封切りに、沖縄県内の交通機関や観光施設ともコラボしていく。
ピカチュウジェット機内ではオリジナルデザインのアメニティーを用意するほか、子どもの乗客にはキーホルダーやアクリルスタンド、塗り絵をプレゼント。客室乗務員のエプロンに加えて機内BGMとアナウンスまでも「ピカチュウ仕様」になる。スカイマークの洞駿(ほら・はやお)社長は「ポケモンさんに版権使用料を無償にしていただいた。塗装費用も負担してもらった」と謝辞を述べた。
これにはスカイマーク社内も感激ひとしおだ。「普通は全面塗装するのに1機数千万円かかる。今は100円単位でコストを見直すべき状況だから、本当にありがたい話」(同社関係者)。
ただ、コロナ禍で予定通りにいかなかった点もある。「ピカチュウジェットを投入するのは主に沖縄路線。だけど沖縄だけ緊急事態宣言が延長されたまま解除されていない。このタイミングでプロジェクトが始動するのは正直、戸惑いもあった。が、ピカチュウに塗ってしまった飛行機をいつまでも寝かせているわけにはいかない。うちはもともと機材繰りに余裕があるわけではないので、動かさないと運航効率に支障を来す」(同社関係者)
そもそもポケモン社内でプロジェクトが発足したのが2020年3月で、スカイマークは同年夏に声を掛けられた。当初は2年間のプロジェクトだったが、コロナ禍が長期化しているため、5年間に延びた経緯がある。沖縄をはじめ新型コロナウイルス感染拡大に予断を許さない状況は続いている。「息の長い取り組みなので、安心・安全に旅行を楽しめる状況になってから楽しんでもらえればいい」と両社の社長やプロジェクト責任者は念を押していた。
スマートフォン向けアプリゲーム「ポケモン GO(ゴー)」が中高年にもヒットしたことから、ポケモンは世代を問わず幅広く認知されている。老若男女が注目するピカチュウジェットで「明るく上昇」したいところだが、スカイマークの経営環境は依然として厳しい。大別すると三つの問題を抱えている。その「3大懸念」が、財務・上場・機材だ。詳しく見ていこう。