JTBやスカイマークなど明らかな大企業が、資本金をあえて1億円に減資し税法上の「中小企業」になる――。こうしたケースがこのところ相次いでいる。資本金を減らすだけで得られる中小企業の税制上の特権、その「うまみ」が大き過ぎるためだ。瞬時に年間6600万円を節税できる事例もある。特集『最強の節税』(全22回)の#9では、資本金1億円超の1万8000社が実行可能な節税術を詳述する。(ダイヤモンド編集部編集委員 清水理裕)
スカイマーク債務超過回避の陰に
資本金1億円に減資の節税術あり
国内航空3位のスカイマークが、2021年3月期に約140億円の「繰延税金資産」を計上し、債務超過への転落を回避することがダイヤモンド編集部の取材で分かった。
営業損益の赤字は300億円程度(前期は22億円の黒字)まで膨らみ、このままだと50億円程度の債務超過に陥るはずだった。だが、将来の税金支払額を減らす効果を繰延税金資産として計上することで、純損益の赤字を大幅に圧縮。その結果、純資産で90億円程度のプラスを維持できるという。
同社は昨年12月、資本金を90億円から1億円にあえて減らした。これにより売上高や従業員数などの規模とは関係なく、税制上“中小企業”の特権を享受できるようになった。実は、巨額の繰延税金資産は、この特権なくして計上し得なかったのだ。
このところ、スカイマーク同様、大企業が資本金を1億円に減資するケースが目立つ。政府の観光需要喚起策「Go Toトラベル」で助けられたJTBの他、報道機関である毎日新聞社もそうだ。
国税庁の最新の統計(上図参照)によると、資本金1億円超の大企業は19年度で1万8089社。統計がさかのぼれる11年度から8年連続で社数が減っているが、裏を返せば減資で節税メリットが得られる企業がまだこれだけ残っていることになる。実際に、そのうまみについて詳しく確認していこう。