地方を救うはずだった「空港民営化」。コロナ禍で状況は一変、巨額の赤字が続けば虎の子の資本を食いつぶし、出資企業や所有権者に支援を要請する可能性も出てくる。収益を見込んだ出資企業、地域活性化と税収増を見込んだ国や自治体にとっては、まさに本末転倒の事態だ。(東京商工リサーチ 増田和史)
航空需要の蒸発で
かつてない大幅減収、赤字転落
新型コロナウイルスの影響による移動の制限が、航空業界を襲っている。国内ではLCC(格安航空会社)のエアアジア・ジャパンが2020年11月に破産。ANAホールディングスや日本航空(JAL)といった大手も例外なく経営難に陥っている。また、北海道を基盤にするAIRDOと九州を基盤にするソラシドエアが、22年10月をめどに共同持ち株会社の設立を表明するなど、業界再編の動きも出てきた。
航空会社と同様、業績不振に苦しむのが空港経営だ。旅客数の減少で収入が絶たれ、巨額のコストを吸収できず赤字決算を発表する空港やターミナルビル運営会社が続出している。
旅客数ナンバーワンを誇る東京国際空港(羽田空港)は、20年春に国際線を大幅に増枠し、「キングオブ空港」の地位をさらに盤石にするはずだった。そこにコロナが襲った。日本空港ビルデング(羽田の旅客ターミナル運営・管理)の20年度決算は、売上高が525億円(前年比79%減)、最終損益は365億円の赤字(前年度は50億円の黒字)に落ち込んだ。
旅客数は国内・国際線含めて約1971万人(前年度比75.9%減)。国内線は「Go Toトラベル」で一時、前年度比50%減まで回復したが、その後の感染再拡大で再び減少した。海外への渡航制限が続く国際線はより深刻で、売り上げの根幹を支える施設利用収入や物品販売が大きく落ち込んだ。
下の図は主要な国際空港の20年度決算をまとめたものだ。成田、中部、関西の3空港も羽田と同様、大幅な減収かつ赤字に転落している(3空港は羽田と異なり、滑走路などの空港施設と旅客ターミナルを一体経営する方式を採用している)。
成田の20年度旅客数は国際・国内線含めて324万人で、前年度の1割以下。1978年の開港以来、過去最低の数字に沈んだ。最終損益は714億円の赤字(前年度は244億円の黒字)で、2004年に株式会社化して以来、初の赤字決算となった。
関西、伊丹、神戸の3空港を運営する関西エアポートも売上高は前年度比8割減、最終赤字は345億円(前期は335億円の黒字)と大変厳しい結果となった。
他方、各地に存在する地方空港も厳しい経営環境が続く。6月に入り、新千歳空港など道内7空港を運営する北海道エアポートが、政府に数百億円規模の資金支援を要望したニュースが舞い込んできた。