「どこかに行ってしまいたい」。仕事からも、絶え間なく携帯に送られるメッセージからも解放され、ここではないどこかに逃亡したい。そう思うことはないだろうか。しかし今の時代、自由に旅行することさえままならない。そんなときには地図をなぞって旅気分を味わうのはどうだろう。これを実現すべく、これまでありそうでなかった本が刊行された。『地図なぞり』だ。日本には魅力的な地形が多くある。そうした地形をお気に入りのペンでなぞってみると、驚くほどの没入感と「ここではないどこか」を旅する感覚を味わえる。本書を推薦する養老孟司さんも「なぞるだけ なのになぜだか ハマってしまう」とコメントを寄せる。本連載では特別に、この本からその一部を紹介する。
![こんなところを通っていたのか!「しまなみ海道」下はなぜ事故が起きやすいのか?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/1/0/650/img_46bd336044ed9516c4e4d7a00a3a8ed4171469.jpg)
夏休みはしまなみ海道に行ってみようか
もう10年以上前になるが「瀬戸内しまなみ海道」に行ったことがある。
景色もよく、とても気持ちのいい場所だった。
時間がなかったので自転車で今治からひとつ目の島に行っただけで帰ってきた。
残念。
源義経の八艘飛びのように島から島へと渡るしまなみ海道も、もちろん『地図なぞり」に収録してある。
![こんなところを通っていたのか!「しまなみ海道」下はなぜ事故が起きやすいのか?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/3/8/650/img_38bd8c6c6395da4574bc9caf70476e94115814.jpg)
海の難所「来島海峡」
さて、南の今治から出発した私が行って帰ってきた場所に「来島海峡」の文字がある。
![こんなところを通っていたのか!「しまなみ海道」下はなぜ事故が起きやすいのか?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/4/0/650/img_404ecfa5a612d0d4cfd7e69bb923c6dd42764.jpg)
この来島海峡、今年の5月にニュースになったのを覚えている人もいるかもしれない。
船の衝突事故があった場所である。
ここは流れが速く、狭い海域にたくさんの船が通行する「海の難所」として知られている。
10年前の私はそんなことも知らずに景色を満喫していたのだが、しまなみ海道は上を通る自動車や自転車にとっては風光明媚で快適な場所だが、船にとっては難所である。
船の位置をリアルタイムに表示する「MarineTraffic」というサイトで見てみるといつも船がぎゅうぎゅうになっているのが分かる。
![こんなところを通っていたのか!「しまなみ海道」下はなぜ事故が起きやすいのか?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/3/f/650/img_3fa9831ab187c8360d5a170ebe4cca98108048.jpg)
こんなに大変な場所だったのだ。
なぞると分かるメリット・デメリット
いつか瀬戸内しまなみ海道を自転車で渡りきってみたいと思っているが、次は下を覗いて船もチェックしておきたい。
これだけ島が近いと橋をかけるには好都合だが、船にとっては難所となる。
島から島へ飛び移るようにつなぐ橋をなぞってみると、陸上交通と海上交通とでメリットとデメリットが逆になることが実感できる。
定期国際航路「大阪釜山航路」
『地図なぞり』には瀬戸内海の小島をすり抜ける「大阪釜山航路」も載っている。
これは瀬戸内海を運行する唯一の定期国際航路で、大阪南港から釜山までを約19時間で結ぶフェリー航路だ。
![こんなところを通っていたのか!「しまなみ海道」下はなぜ事故が起きやすいのか?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/2/8/650/img_286c6c43c32a6428d3c9be3c67cdcdf8119571.jpg)
![こんなところを通っていたのか!「しまなみ海道」下はなぜ事故が起きやすいのか?](https://dol.ismcdn.jp/mwimgs/e/c/650/img_ec561db255913e80c4e6736e4a5e4a2a320960.png)
この航路も狭い海域が多く、なぞりがいがある。
瀬戸内海の小島をすり抜ける線をなぞるとここが難所であることが体感できる。
なぞりながら狭い海域を通り抜ける船の緊張感を味わってほしい。
ちなみに鉄腕ダッシュに登場したDASH島はしまなみ海道の辺りにあるとの噂である。
大昔の電波少年に登場した無人島もここである。