韓国で120万部のミリオンセラーとなった話題書がある。『どうかご自愛ください ~精神科医が教える自尊感情回復レッスン』というタイトルの本だ。精神科医である著者が「自尊感情(≒自己肯定感)」の回復法を指南した一冊である。「些細な事を気にしすぎる」「パートナーとの喧嘩が絶えない」「すぐに人と比べて落ち込む」「やる気が出ない」「ゆううつ感に悩んでいる」など、人々が抱える悩みのほとんどは自尊感情の低下が原因だと本書は伝えている。そして、その回復法を教えてくれる。
本書の日本版が、ついに7月14日に刊行となった。その刊行を記念して、本書の一部を特別に紹介する。今回は、「自尊感情を下げる5つの批判」について触れた内容を紹介していこう。

絶対に覚えておきたい、あなたの自尊感情を傷つける「5つの批判」とは?Photo:Adobe Stock

自尊感情を下げる「5つの批判」とは?

 批判はウイルスのようなものです。相手の口から発せられ、こちらの体内に侵入します。ウイルスが集団に伝染するように、信じていた友人が陰で複数人にまき散らしたりもします。誰しもが批判を恐れ、自分に関する言葉には敏感になります。

 ウイルスは体内に入って留まることで問題を引き起こします。批判も同じように、胸に留めておくことが問題になります。ネガティブな感情が浮かんできて、それが私たちを攻撃するのです。マスクや手洗いでウイルス対策をするように、批判に対して警戒して接することで、それを予防し、後遺症を軽くすることもできます。どんなときに批判が降りかかるのかを知り、できるだけ批判を避けるようにしましょう。

 まず、批判の種類を知っておきましょう。批判に対して誤解している人が意外に多いものです。たとえば、事実や相手のために言ったことであれば批判に当たらないという人もいますが、そんなことはありません。相手が敵であれ味方であれ、もしくは自分であれ、次のようなものなら批判と呼べます。

① 事実を指摘する批判
 私たちは、幼い頃から正直でありなさいと教わってきたこともあり、事実をありのままに語ることを良いことだと考えています。それがたとえ批判だとしても「事実を指摘したのに何が間違いなのか?」と考えるのです。

 しかし、その言葉の意図や言葉にのせた感情によっても“事実を指摘する”ことは相手への批判になりえます。たとえば、「どうやら、君は会社よりも家庭優先のようだな」という上司の皮肉です。その言葉が事実だとしても、指摘された人は「批判された」と思うでしょう。上司の言葉の裏には“仕事を二の次にするとはけしからん”という感情が透けて見え、相手にダメージを与えようという意図があるからです。これは批判に違いありません。

② 原因を指摘する批判
「お前の意志が弱いせいだ!」など、否定的な結果について原因を探って指摘しても、それは結局、批判に帰結します。原因を洗い出す必要があるときは、相手の気持ちを配慮し、十分なサポートをしたうえでなければなりません。

③ 未来を否定する批判
「なぜごまかしたの! 嘘つきは泥棒の始まりだよ!」。子どもたちを教育するときによく飛び出す小言の1つです。その行動がいかに正しくないかを指摘し、たしなめ、再び繰り返さないようにという気持ちから発せられた言葉でしょう。

 しかしこの言葉を聞かされたほうは、相手に怒りを抱くだけです。ちょっとした嘘をついただけなのに泥棒扱いされたように感じ、あまりにこれが繰り返されると「それならいっそ泥棒になってやろう」とまで思うようになります。こうした未来まで否定するような指摘は、反抗心を生み出してしまいます。

④ 誰かと比較する批判
 比較するとき、模範例の後に続く言葉はたいてい批判です。「あの人は〇〇なのに、あなたは……」。その後は言わずともわかります。

 主に親や上司など、上の立場にある人が下の立場の人同士を比べることが多いと思われがちですが、下の立場の人も上の立場の人を比べています。「隣の部署の部長ならまともな判断ができていたはずだ」「もし大企業ならもっとましなはずだ」など、人だけでなく企業を比べたりもします。

 親子間も同様に、子どもだって「家が裕福だったら」「もっと共感してくれる親だったら」などと思っているものです。心の中だけに留めておけず、口に出した途端、それは批判となります。

⑤ 「どうして?」と問いただす質問型の批判
「どうしてそんなひどいことをしたの?」という問いかけには、”その行動を分析しなさい”という意味ではなく、“あなたは、ひどいと知りながらその行動をしてしまったダメな人間だ”という批判の意味が込められています。

 これら5つのよくある批判のほかにも、言われて気に障る言葉があれば批判だと思えばいいでしょう。表面上は原因と結果を話していたり、落ち着いた言葉遣いのアドバイスのように聞こえもしますが、気分を害するようであればそれは批判です。

(本原稿は、ユン・ホンギュン著、岡崎暢子訳『どうかご自愛ください』からの抜粋です)

ユン・ホンギュン
自尊感情専門家、ユン・ホンギュン精神健康医学科医院院長
中央大学校医科大学を卒業し、同大学医科大学院で博士課程を修了。京郷新聞、韓国日報、月刊生老病死などへの寄稿のほか、FMラジオ交通放送「耳で聞く処方箋」などの相談医としても活躍。韓国依存精神医学会、韓国賭博問題管理センター、中央大学ゲーム過没入センター、性依存心理治療協会、校内暴力防止のための100人の精神科医師会などで活動。主に関心を寄せている分野は「自尊感情」と「依存」。初の著書『どうかご自愛ください ~精神科医が教える「自尊感情」回復レッスン』が韓国で120万部のミリオンセラーに。