世界の「今」と「未来」が数字でわかる。印象に騙されないための「データと視点」
人口問題、SDGs、資源戦争、貧困、教育――。膨大な統計データから「経済の真実」に迫る! データを解きほぐし、「なぜ?」を突き詰め、世界のあり方を理解する。
書き手は、「東大地理」を教える代ゼミのカリスマ講師、宮路秀作氏。日本地理学会の企画専門委員としても活動している。『経済は統計から学べ!』を出版し(6月30日刊行)、「人口・資源・貿易・工業・農林水産業・環境」という6つの視点から、世界の「今」と「未来」をつかむ「土台としての統計データ」をわかりやすく解説している。

日本は世界2位の「産業用ロボット」大国! 面白すぎる歴史とは?Photo: Adobe Stock

日本は世界2位の「産業用ロボット」大国!

 日本で初めて産業用ロボットが登場したのは1969年のことでした。川崎重工によって製造された「川崎ユニメート2000型」です。

 当時の日本は高度経済成長期にあり、人手不足が問題視されていました。地方都市から都市部への集団就職が行われていた時代であり、上京してくる若年労働者は「金の卵」と呼ばれました。

 また人手不足が原因で事業を続けられず倒産する企業もありました。「ユニメート」とは「汎用能力を持つ作業仲間」という意味があるそうです。「仲間」と称しているあたりが非常に素敵ですね。

「川崎ユニメート2000型」は重量が1.6トンもあるのに対して、可搬重量はわずか12㎏。価格は1200万円(当時の大卒初任給は3万円)。「仲間」と呼ぶには力不足だったといえるでしょう。

 しかしこれ以降、日本の産業用ロボットは自動車産業を中心に開発が進んでいきました。1973年の第一次オイルショックによって産業構造の転換がみられ、自動車産業などの加工組立型産業が成長していった時代でもありました。

 つまり「産業用ロボットは自動車産業と発展を共にした」といってもいいでしょう。自動車企業はスポット溶接や塗装といった、単純ではありますが重労働の工程を産業用ロボットに担わせ、労働者をより高度な判断を必要とする業務へと促していきました。

 現在は、自動車産業だけでなく、電子・電気機器の製造にも利用が拡大し、世界中の「ものづくり」を支えています。

 2019年の世界の産業用ロボットの稼働台数は、中国、日本、韓国、アメリカ合衆国、ドイツの5ヵ国が突出して多くなっています。日本ロボット工業会によると、日本の稼働台数は35万4878台で、世界第2位です。上記の国々では、自動車の生産台数が多く、そのため産業用ロボットの稼働台数が多いことは容易に想像がつきます。

 また世界最大の中国は「世界の工場」として工業製品の生産が盛んなことも背景として考えられます。2010年比で見た場合、産業用ロボットの稼働台数が急増しているのはインドやタイ、ベトナム、マレーシアなどの東南アジアから南アジアにかけての国々です。これらの国々の近年の工業発展は万人の知るところではありますが、その背景には「仲間」としての産業用ロボットの活躍があるといえます。

(本稿は、書籍『経済は統計から学べ!』の一部を抜粋・編集して掲載しています)