2021オリンピックと
2020紅白歌合戦の違いとは?

 さて、「コロナ第3波」の渦中にあった昨年大みそかの第71回紅白歌合戦は、無観客で開催された。キャッチフレーズは「今こそ歌おう みんなでエール」だった。

 そして、1年延期された東京オリンピックも、おおむね無観客で開催されようとしている。

 両者を比較すると何が違うだろうか。

 決定的に違うのは、トップによる方針決定のタイミングではないか。

 紅白歌合戦の無観客開催が発表されたのは、昨年9月10日。NHKの前田晃伸会長による定例記者会見の場だった。開催の3カ月以上前に無観客で行うとの方針が決まったということだ。

 一方の東京オリンピックは、ぎりぎりまで有観客開催を志向して決定を先延ばしした。菅義偉首相は、有観客で実施できるような「感染状況の改善が起こること」、または「世間の雰囲気が有観客容認に傾くこと」を期待して決定を先延ばししたように見える。いわゆる「神風」が吹くとでも思ったのだろうか。

 準備・実行の困難の増加、国民間の感情的対立の深化など、判断の遅延によって生じたマイナスの影響は大きかった。適切に意思決定できない無能なリーダーを頂くと、組織全体が大いに迷惑することの好例だ。

 おかげで、今に至るも混乱は各所で続いている。例えば宮城県では、サッカーの試合について宮城県知事は予定通り有観客で行うと言う一方で、仙台市長や地元の医師会が無観客開催を要望するありさまだ。

 また、大会のボランティアに何をしてもらうのか、もらわないのかについても、「これから詳細を考える」状況の自治体も多い。感染症対策の「人流抑制」の観点からは、医療関係者を除いてイベントに関わる人が少ないほど好ましいだろう。一方、オリンピックに関わることを期待して来たボランティアの人々の感情や、オリンピックの盛り上がりを演出したいと願う主催者の意向は、感染症対策と矛盾する。

 ここでも、「本来なら開催反対」と「オリンピックを盛り上げよう」という二つの考え方が対立し、混乱と共に心理的しこりが発生しそうだ。