『ばけばけ』第59回より 写真提供:NHK
今日の朝ドラ見た? 日常の話題のひとつに最適な朝ドラ(連続テレビ小説)に関する著書を2冊上梓し、毎日レビューを続けて10年超えの著者による「読んだらもっと朝ドラが見たくなる」「誰かと話したくなる」連載です。本日は、第59回(2025年12月18日放送)「ばけばけ」レビューです。(ライター 木俣 冬)
「今夜は別の怪談を」
ヘブン(トミー・バストウ)が珍しく朝早く起きていると思ったら、寝ずに「鳥取の布団」について書いていた。よっぽど夢中になっているようだ。
金縛りは? と思ったら、「ワカラナイ」。
ヘブンはトキ(高石あかり、「高」の表記は、正確には「はしごだか」)にお願いごとをする。もっと「鳥取の布団」を聞かせてほしい。日本語のわからないところを埋めていきたいのだ。
「もっともっと聞きたい」
「もちろんです。昨日も言いましたが、何遍でも何十遍でも話しますけん」
ふたりの情熱は止まらない。ただ、ちょっと問題が。
「鳥取の布団」は母・フミ(池脇千鶴)から聞いたのかとヘブンが問う。そうではない。元夫の銀二郎(寛一郎)から聞いた話で、それがなんとなくわだかまる。
「何年も前に少しだけ。その人は東京にいて、もう会うことはないですけん」とトキは断りを入れるが、気まずい。
「今夜は別の怪談を」とトキは提案する。
錦織のヘブンへの強烈な執着といい、トキのヘブンへの微妙な心の揺れといい、平常心を超えているような印象を受ける。錦織のそれを恋心と解釈するのは冗談だが、トキのそれは深刻に見える。それが銀二郎への断ち切れない思いなのか、ヘブンに前の夫の気配を感じさせたくないからなのか。果たしてどちらであろうか。
ヘブンは「ちなみに」を「ちみな」と間違えている。たどたどしさが、かわいいようなおもしろいような気もするが、それをかわいいとかおもしろいというふうに捉えてはいけないような気もする。一生懸命なことを矮小(わいしょう)化させてしまうような気がして。
閑話休題。







